社会学

松田素二「都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学」

都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学松田 素二 河出書房新社 1996-02売り上げランキング : 676651Amazonで詳しく見る by G-Tools アフリカの主要都市ナイロビをフィールドワークした人類学者の都市社会学史。 ナイロビのスラム街に潜り込み、何ヶ月も生活…

人事異動の季節におもう

3月は人事の季節だ。 一定規模以上の組織ならだいたい人事異動があるから、そこに勤めるサラリーマン達はこの時期に矢継ぎ早に発令される人事に、それこそ一喜一憂する。行きたい部署がある人は、思い通りの部署に行けるかどうかヤキモキする。上司や部下と…

マキアヴェリ著(マキャベリ)、佐々木毅訳「君主論」

君主論 (講談社学術文庫)マキアヴェリ 佐々木 毅 おすすめ平均 麦酒の苦味に似た味政治学・帝王学のために必読。君主論現代でも十分に生きる政治観分かりやすいAmazonで詳しく見る by G-Tools ニッコロ・マキャヴェッリは、イタリアの中世の政治思想家であり…

道路特定財源報道を見ながら、田舎における道路整備の必要性を考える(ストロー効果の観点から)

わたしの住む北海道の東部地域は、かつて社会インフラが貧弱で、たとえば国道などの幹線道路ですら、つい30年、40年前までは砂利道で不便だったという。先日も地元出身の年配者から話を聞いたが、特に春の雪解け時期には道路がぬかるみ、場所によっては…

佐藤優・魚住昭 「ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき」

ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき佐藤 優 魚住 昭 朝日新聞社 2006-12売り上げランキング : 35202おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools …(佐藤優は「国家の罠」において)いわば国家を愛しながら平然と突き放すという離れ業をあっさ…

「『丸山眞男』をひっぱたきたい―希望は、戦争。」論文とその後の論争について

今年の終わりに、今年度の論題で話題になった論文とその後の論争について追ってみた(2007年12月31日記す)。 話題となった論文は、無名のフリーターが書いた「『丸山眞男』をひっぱたきたい―希望は、戦争。」(赤木智弘、論座2007年1月号:53-59p)というも…

手記「私はなぜ社説を盗用したか」(小林広、論座2007年7月号:184-195p)を読んで大学院生時代を思い出した

論座の2007年7月号を流し読みしていたら、次の記述にハッとさせられた。 その記事は、盗用で社説記事を書いて山梨県の新聞社を解雇された記者の手記だ。解雇後に医療専門家から送られたというメッセージの引用部分に、次のくだりがある。 ジャーナリストには…

柴田昌治,金田秀治「トヨタ式最強の経営―なぜトヨタは変わり続けるのか」

トヨタ式最強の経営―なぜトヨタは変わり続けるのか (日経ビジネス人文庫)柴田 昌治 金田 秀治 おすすめ平均 トヨタを題材とした企業風土のケーススタディAmazonで詳しく見る by G-Tools トヨタ自動車の経営絶好調の秘密を探りたい程度の気持ちで読んだら、予…

佐藤優「獄中記」

獄中記佐藤 優 岩波書店 2006-12売り上げランキング : 2385おすすめ平均 強靱な精神力に脱帽知性と行動、そして外交の失策。出会いの本 Amazonで詳しく見る by G-Tools しかし佐藤優氏の書く文章は、どうしてこれほどまでに読者を引きつけるのだろうか? 以…

マックス・ヴェーバー「支配の社会学」

これまでの人類史は集団による生活史であり、デフォーのロビンソン・クルーソー的な単独生活は希なケースに過ぎない。人間が集団で生活するということはそこに社会性が生まれる。そして必然的に、社会性の一形態として支配者―服従者の支配の構図が成立する。…

組織改革にあたっての雑感

組織改革について雑感を短文にまとめたので、ここに公開する。 まず大前提として、この手の「組織改革」というものは何のためにやるかが重要であり、それをまず明確にすることが必要となります。目標像の設定です。 そして目標像は、「組織の秩序ある運営」…

NHK「その時歴史が動いた」を見て人間の忘却性について考えた

先日、NHKの番組「その時歴史が動いた」の「中国と国交を回復せよ〜足利義満の日明外交〜」の再放送を見た。 内容は、室町幕府・三代将軍の足利義満の日中国交回復の取り組みを描いたものであった。足利義満は、100年前の蒙古襲来の侵略のトラウマが日本…

一つの妖怪が世界を徘徊している、――グローバリゼーションの妖怪が。

一つの妖怪が世界を徘徊している、――グローバリゼーションの妖怪が。 この言葉はもちろん有名なマルクスの言葉「一つの妖怪がヨーロッパを徘徊している、――共産主義の妖怪が」(共産党宣言)をもじったものである。マルクス主義とグローバリゼーションが関係…

流域管理、環境ガバナンスを動かしていくためにはどうすれば良いのか

1 地域の自然資源管理の課題 先日の書評、佐藤優「自壊する帝国」において、わたしは佐藤氏の発言を引きながら、「部局間の仕事の重複」=「仲が悪くなる」という定式を重複悪化説と呼び、北海道の自然資源管理の事例と絡めて議論した。その流れで、日本の…

理解社会学について

マックス・ヴェーバーの概念整理のつづき。今日は理解社会学という方法論を考えたい。 理解社会学とは、わたしの理解でいえば、社会を動かすのはそれを支える個々人の内面的な動機づけだという問題意識のもと、個々人の内面的な動機(倫理観や道徳観)にスポ…

価値自由(Wertfreiheit)と理念型(Idealtypus)について

昨日、社会学の泰斗・マックス・ヴェーバーについて触れたが、わたしの知的好奇心が刺激されたこともあり、彼の提唱した概念について、ここに整理しておきたい。もちろんわたしは今は研究者ではないので、ここで新しい解釈に挑戦したいとか思っているわけで…

山之内靖「マックス・ヴェーバー入門」

マックス・ヴェーバー入門山之内 靖 おすすめ平均 評価は難しい。ニーチェ・ファンにも勧めたい師に反逆!ラディカルな問題提起を行った好著「近代」批判者としてのウェーバーAmazonで詳しく見る by G-Tools1 社会学の泰斗・ヴェーバー 理解社会学、理念型…

手嶋龍一,佐藤優「インテリジェンス 武器なき戦争」

インテリジェンス 武器なき戦争手嶋 龍一 佐藤 優 おすすめ平均 事実と論理と闇の世界情報戦の底深さ並みのスパイ小説なんかより100倍面白い! さすがにプロフェッショナル外交や事件の裏が分かる本Amazonで詳しく見る by G-Tools 日本最高水準の外交専門家…

日本の経済政策はいかにあるべきか(安倍政権とトリクルダウン理論)

安倍晋三政権の打ち出した税制改正が、「大企業寄り」と批判を集めている。特に大手メディアは、企業に優しくて庶民に厳しい安倍晋三というラベリングで新政権を批判をしたがっている。格差社会というキーワードが大きく社会問題となるなかで、労働者や庶民…

わたしの幸せ論

世は渇望の時代である。 現代において人々は、欲望をむき出しにし、求め、策略を練り、争いながら生きている。あたかも欲望を満たすことが人生の目的であるかのように。前ライブドア社長の堀江貴文氏の「金で買えないものはない」という発言は、その発言が妥…

わたしの組織嫌い

わたしは組織に属して働いている者だが、考えてみると、わたしほど組織を嫌悪し、バカにしている人間もすくないかもしれない。とにかく組織の論理というのが嫌いなのだ。これは論理を越えて、わたしの実存に基づくものである。 1 年功序列型人事の弊害 たと…

新しい霞ヶ関を創る若手の会「霞ヶ関構造改革・プロジェクトK」

霞ヶ関構造改革・プロジェクトK新しい霞ヶ関を創る若手の会 東洋経済新報社 2005-11売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools この本を書いた新しい霞ヶ関を創る若手の会とは、平成9年に各省に入省した国家公務員の若手有志が中心となってつくっ…

小泉首相の靖国神社参拝報道に思うこと

先月の話だが、小泉首相の靖国神社参拝の是非が話題になった。中国、韓国はすぐに反応し、不快感をあらわにした。日本国内といえば、かつての左右対立そのままに「戦没者の慰霊という日本人の心の問題は他国にとやかく言われる問題ではない」という参拝賛成…

わたしたちが生きていくということ(経済学におけるトレードオフ)

1 自然に詳しいSさんのこと わたしの友人のSさんは地域の自然ガイドをやっており、地域の植物・動物について異常に詳しい。しょっちゅう地域を歩いているので、木本・草本や野鳥の判別はもとより、「今、どこどこで何が咲いているよ」とかのプチ自然情報も…

いま、南北問題を考える

先日、途上国の貧困について話を聞く機会があり、久しぶりに世界の南北問題について考えた。論旨としては、世界の富の80%は世界の20%の富裕層が所有していること(一部の富裕層が世界の富を独占している)、アフリカなどの最貧国では慢性的な貧困で餓死者…

アフリカからグローバリゼーションを考える

7月に放送されたNHKスペシャル「アフリカ ゼロ年」(4回シリーズ)を見て、改めてグローバリゼーションの功罪について考えさせられてしまった。 わたし自身、アフリカには2ヶ月弱ほど滞在したこともあるし、いくつかの関連著書も読んでいるのだが、今回の…

「21世紀の倫理を考える⑤」(質疑応答)

1.「自立した個」をめぐって(確かなる「私」などは存在するのか) 質問 「自分で考えて、自己のうちに規範を見出すと言うが、そんなにしっかりとした自分(私)は存在するのか。自分で一生懸命考えた答えだと言っても、それは知らず知らずのうちに周囲に、…

「21世紀の倫理を考える④」(勉強会での発言要旨)

7.探検部の探険論争 それでは次に②に進んで、「『あえて』やる前向きさ」という規範について説明します。これも対立モデル「しらけムードのニヒリスト」にかかわる、わたしの体験から話をはじめます。 かつてわたしが学生時代に探検部という団体に所属して…

「21世紀の倫理を考える③」(勉強会での発言要旨)

そこで21世紀の倫理ですが、今回は、わたしが重要と考える規範を3つピックアップし紹介して、これからの社会の倫理を考える題材としたいと思います。規範モデルの紹介は、対立するモデルとの比較の中で説明したほうが分かりやすいと考えましたので、ごら…

「21世紀の倫理を考える②」(勉強会での発言要旨)

3.伝統的な民主主義批判 民主主義批判は、何もわたしが最初なわけではなく、哲学や社会科学などの分野では伝統的におこなわれてきました。 古いものでは、古代ギリシャの哲学者のプラトンの批判が有名です。古代ギリシャのアテネで行われていた政治は直接…