重松清「ビタミンF」(新潮文庫)

 重松作品を初めて読みましたが、正直、これだけの書き手だとは知りませんでした。良い書き手と出会えた、この出会いに感謝。

 30代後半から40代前半までの、子育て世代の父親の視点から物語は描かれている。その父親の描き方は、時にはいたたまれなくて読み進むのをためらってしまうほど、切なくて、もの悲しいストーリー。
 かっこ悪くても、最後は前向きに頑張ろうとする主人公たちの姿に、思わずエールを送りたくなる。そんな七つの短編による作品。直木賞受賞作。

 重松清の名前は当然知っていましたが、これほどリアルに現実の葛藤を描くことのできる書き手だとは思ってもみませんでした。