手嶋龍一,佐藤優「インテリジェンス 武器なき戦争」

インテリジェンス 武器なき戦争
インテリジェンス 武器なき戦争手嶋 龍一 佐藤 優

おすすめ平均
stars事実と論理と闇の世界
stars情報戦の底深さ
stars並みのスパイ小説なんかより100倍面白い!
starsさすがにプロフェッショナル
stars外交や事件の裏が分かる本

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 日本最高水準の外交専門家である手嶋龍一氏,佐藤優氏の2名が、国際情勢、日本外交を語り尽くした対談集。
 先日の北朝鮮核実験後、コンドリーザ・ライス国務長官が来日し、「日米同盟の抑止力は万全だ」と発言した。この発言を取り出して、この発言は①日米同盟がいささかの緩みもないことを強調することで、当座は米国が戦略的な守勢をとることを示唆、②アメリカの核の傘が日本を包み込んでいると念を押して日本国内に噴出している核武装論議を暗にけん制、と巧みに分析してしまう手嶋龍一氏(228ー229p)。
 一方、手嶋氏のベストセラー小説「ウルトラ・ダラー」を引き合いに、この内容は「「嘘のような本当」と「本当のような嘘」の混ぜ方が非常にうまい。みんなが「嘘だな」と思うような部分はたぶん本当の話で、みんなに「これはありうるだろうな」と思わせるような部分は、おそらく嘘でしょう」(27p)と分析をし、「さすが」と手嶋氏を唸らせてしまう佐藤優氏。この気鋭の外交プロフェッショナルの妥協のない分析合戦が本書の最大の魅力となっている。
 わたしも実務者の端くれだが、本書から学ぶべき点はほんとうに多い。何度も読み返して、外交の基礎を、また実務者の心構えを刻み込みたくなるたぐいの本だ。ほんの一部を以下に引用しよう。

貴重な情報というのは、常に周辺部に染み出していくのです。革命は常に辺境から始まるという名言を吐いたのは毛沢東です。(79p)

行き詰まったら戦線を広げるというインテリジェンスの世界の定石ですよ。…行き詰まった外交案件はひとまず放っておいて、思いがけない局面に布石を打つという戦略ですね。(161p)

(インテリジェンスに関わる人材は)学術的な基礎体力をつけないといけません。学術的な研究と現実のインテリジェンスをつなぐことができる専門家を育てる必要があります。…社会哲学者が20年前に欧米双方の新保守主義的なトレンドを正確に見通していたわけで、こういう断片的なデータを収集して一つの情報を組み上げることができるのが、「インテリジェンスを理解する人間」ということです。しかしそういう人間は、その情報を面白おかしく人に説明する能力を持っている。断片的なデータをそのまま渡しても政治家はわかりませんが、インテリジェンスを理解した人間が説明すればわかるでしょう。(193-194p)

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(私の本書の評価★★★★★)
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