社会評論

松田素二「都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学」

都市を飼い慣らす―アフリカの都市人類学松田 素二 河出書房新社 1996-02売り上げランキング : 676651Amazonで詳しく見る by G-Tools アフリカの主要都市ナイロビをフィールドワークした人類学者の都市社会学史。 ナイロビのスラム街に潜り込み、何ヶ月も生活…

江上剛「もし顔を見るのも嫌な人間が上司になったら―ビジネスマン危機管理術」

もし顔を見るのも嫌な人間が上司になったら―ビジネスマン危機管理術 (文春新書)江上 剛 文藝春秋 2010-07売り上げランキング : 77959おすすめ平均 タイトルと内容は別物人生を生き抜くための「ガイドブック」一回目を通してみては?Amazonで詳しく見る by G-…

黒澤明「デルス・ウザーラ」

(Дерсу Узала, Dersu Uzala) 今から15年前の学生時代に、仲間と共に探検隊を作ってロシアに渡った際に、現地の通訳のおやじさんがこの作品を絶賛していたのを記憶している。それ以来、図書館やレンタルビデオで何度も探したが手に入らず、先日もういい加…

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

ゴールデンスランバー新潮社 2007-11-29売り上げランキ ング : 183おすすめ平均 映画 を観てからの読了。最後の詰 めだけが・・・あれ?と数ペ ージ前から読み直して確認するのが大変Amazonで詳しく見る by G-Tools 天才的な能力を持つ、知り合いの先生が本…

ボルト、ドーピング大丈夫か?

陸上男子百メートル決勝でボルト(ジャマイカ)が9秒69の世界新で初の金メダルをとった。身長196センチ、体重86キロの肉体を生かした大きなストライドで、最後の20メートルを流し、両手を広げ、胸をたたいてフィニッシュした。にもかかわらず、自…

勝ちに徹した石井慧、理想で負けた塚田真希②(日本「柔道」から世界の「Judo」へのコペルニクス的転換)

日本古来の「柔道」は、一本勝ちに徹底的にこだわってきた。どんなにポイントで有利になっていても、最後まで一本勝ちにこだわる。最近の選手で言えば、井上康生や鈴木桂治の柔道スタイルである。彼らの柔道は見ていてすがすがしいし、美しい大技が決まれば…

勝ちに徹した石井慧、理想で負けた塚田真希①(日本「柔道」から世界の「Judo」へのコペルニクス的転換)

柔道最終日に、男子100キロ超級で日本の石井慧(国士舘大学)が、危なげない柔道で優勝した。 石井慧は勝ちに徹していた。一本勝ちを狙うというよりも、したたかな計算で勝つ柔道に徹していた。初戦から決勝までの戦いで、リスクのある大技は少なかった。…

佐藤優・田中森一「正義の正体」

正義の正体田中 森一集英社 2008-03-26売り上げランキング : 3294おすすめ平均 純粋に楽しめる対談本一気に読んでしまいました外務省と東京地検の異端児が語る組織事情と国策捜査Amazonで詳しく見る by G-Tools ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「怪談」…

佐藤優「国家の謀略」

国家の謀略佐藤 優 おすすめ平均 国家および民族のための諜報インテリジェンスについて分りやすく説明されている宗教の持つ意味とは?面白い!ビジネスに応用できるかどうかは何ともAmazonで詳しく見る by G-Tools◎池田徳眞「プロバガンダ戦史」の原則から見…

道路特定財源報道を見ながら、田舎における道路整備の必要性を考える(ストロー効果の観点から)

わたしの住む北海道の東部地域は、かつて社会インフラが貧弱で、たとえば国道などの幹線道路ですら、つい30年、40年前までは砂利道で不便だったという。先日も地元出身の年配者から話を聞いたが、特に春の雪解け時期には道路がぬかるみ、場所によっては…

製紙業界の環境偽装はこれからの時代のキーワードだ

王子製紙、日本製紙など製紙業界の古紙配合率の偽装が次々と発覚している。 紙・パルプ業界の大手のほとんどすべてがこの偽装に関わっているのだから、この業界全体が偽装に手を染めていたことは間違いない。最大手の王子製紙は年賀はがきの配合率40%と謳…

佐藤優・魚住昭 「ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき」

ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき佐藤 優 魚住 昭 朝日新聞社 2006-12売り上げランキング : 35202おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools …(佐藤優は「国家の罠」において)いわば国家を愛しながら平然と突き放すという離れ業をあっさ…

鈴木宗男・佐藤優「反省 私たちはなぜ失敗したのか?」

反省 私たちはなぜ失敗したのか?鈴木 宗男/佐藤 優 アスコム 2007-06-15売り上げランキング : 6557おすすめ平均 恐るべき官僚の実態を知る手がかりに可笑しさと怖ささらなる深層の真相を想像するAmazonで詳しく見る by G-Tools 佐藤優氏、鈴木宗男氏の著書は…

藤原正彦「日本人の矜持―九人との対話」

日本人の矜持―九人との対話藤原 正彦 新潮社 2007-07売り上げランキング : 39536おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 小学校において重要なのは、一に国語、二に国語、三,四がなくて五に算数。他の科目はすべて十以下といっていい。(73p) 藤原正彦…

「『丸山眞男』をひっぱたきたい―希望は、戦争。」論文とその後の論争について

今年の終わりに、今年度の論題で話題になった論文とその後の論争について追ってみた(2007年12月31日記す)。 話題となった論文は、無名のフリーターが書いた「『丸山眞男』をひっぱたきたい―希望は、戦争。」(赤木智弘、論座2007年1月号:53-59p)というも…

手記「私はなぜ社説を盗用したか」(小林広、論座2007年7月号:184-195p)を読んで大学院生時代を思い出した

論座の2007年7月号を流し読みしていたら、次の記述にハッとさせられた。 その記事は、盗用で社説記事を書いて山梨県の新聞社を解雇された記者の手記だ。解雇後に医療専門家から送られたというメッセージの引用部分に、次のくだりがある。 ジャーナリストには…

榊原英資「為替がわかれば世界がわかる」

為替がわかれば世界がわかる (文春文庫)榊原 英資 おすすめ平均 財務官としての仕事が書かれているだけ情報をどのように扱うか。政・経・軍事・通貨を一体不可分で考える為替と経済の関係を知りたい人へミスター円と呼ばれた男Amazonで詳しく見る by G-Tools…

佐藤優「獄中記」

獄中記佐藤 優 岩波書店 2006-12売り上げランキング : 2385おすすめ平均 強靱な精神力に脱帽知性と行動、そして外交の失策。出会いの本 Amazonで詳しく見る by G-Tools しかし佐藤優氏の書く文章は、どうしてこれほどまでに読者を引きつけるのだろうか? 以…

森達也「豊かで複雑な、僕たちのこの世界 森達也対談集」

思想的スタンスが必ずしも一致するわけではないが、森達也氏の考え方や発言にはハッとさせられたり、考えさせられるものがあるので、彼が出す本などの作品はなるべくチェックするようにしている。先日NHK教育で放送されたドストエフスキー特集で、「カラマー…

「新版 北海道の歴史(下)」

1 林務畑出身の北海道知事の二人 北海道は不思議な政治風土を持っている。伝統的に社会党系(革新系)が強い傾向があったし(最近は徐々に保守化しているかもしれないが)、北海道知事の系統を見ていっても不思議な流れがある。たとえば初代民選知事の田中…

わたしの組織嫌い

わたしは組織に属して働いている者だが、考えてみると、わたしほど組織を嫌悪し、バカにしている人間もすくないかもしれない。とにかく組織の論理というのが嫌いなのだ。これは論理を越えて、わたしの実存に基づくものである。 1 年功序列型人事の弊害 たと…

田中均、田原総一朗「国家と外交」

国家と外交田中 均 田原 総一朗 講談社 2005-11売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools 評判の佐藤優著「国家の罠」を読んだときにも思ったことだが、外交というのはつくづくプロフェッショナルの現場だ。交渉相手国との利害関係(win-winの関係…

黒澤明監督「生きる」

生きる志村喬 黒澤明 小田切みき 東宝 2003-03-21売り上げランキング : 3,793おすすめ平均 おもしろい噂は本当なのだろうか?★5つしかないのが残念。不朽の名作。あなたならどうする。私なAmazonで詳しく見る by G-Tools【冒頭のシーン】 住宅横の空き地問…

内山節「時間についての十二章―哲学における時間の問題」

時間についての十二章―哲学における時間の問題内山 節岩波書店 1993-10売り上げランキング : 236,035Amazonで詳しく見る by G-Tools 伝統的山里の視点から、自然と労働の問題について思考を深める哲学者・内山節の代表作。群馬県上野村という山村での生活に…

「21世紀の倫理を考える⑤」(質疑応答)

1.「自立した個」をめぐって(確かなる「私」などは存在するのか) 質問 「自分で考えて、自己のうちに規範を見出すと言うが、そんなにしっかりとした自分(私)は存在するのか。自分で一生懸命考えた答えだと言っても、それは知らず知らずのうちに周囲に、…

「21世紀の倫理を考える④」(勉強会での発言要旨)

7.探検部の探険論争 それでは次に②に進んで、「『あえて』やる前向きさ」という規範について説明します。これも対立モデル「しらけムードのニヒリスト」にかかわる、わたしの体験から話をはじめます。 かつてわたしが学生時代に探検部という団体に所属して…

「21世紀の倫理を考える③」(勉強会での発言要旨)

そこで21世紀の倫理ですが、今回は、わたしが重要と考える規範を3つピックアップし紹介して、これからの社会の倫理を考える題材としたいと思います。規範モデルの紹介は、対立するモデルとの比較の中で説明したほうが分かりやすいと考えましたので、ごら…

「21世紀の倫理を考える②」(勉強会での発言要旨)

3.伝統的な民主主義批判 民主主義批判は、何もわたしが最初なわけではなく、哲学や社会科学などの分野では伝統的におこなわれてきました。 古いものでは、古代ギリシャの哲学者のプラトンの批判が有名です。古代ギリシャのアテネで行われていた政治は直接…

「21世紀の倫理を考える①」(勉強会での発言要旨)

先日、ある場で、現代社会の状況について30分程度のスピーチをする機会があった。好評を得たこともあり、その内容をここにアップしたい。なお文章化するにあたり、一部加筆・修正していることを明記する。 1.ブッシュ大統領と民主主義 それではわたしの…

堺屋太一「日本を創った12人〈前編〉」

日本を創った12人〈前編〉堺屋 太一PHP研究所 1996-10売り上げランキング : 83,463おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ベトナムで読んだ本の第一弾として本書を取り上げたい。「えっ、ベトナムのビーチで日本の歴史の本を読んだの!?」と驚かれる…