アフリカからグローバリゼーションを考える

 7月に放送されたNHKスペシャル「アフリカ ゼロ年」(4回シリーズ)を見て、改めてグローバリゼーションの功罪について考えさせられてしまった。
 わたし自身、アフリカには2ヶ月弱ほど滞在したこともあるし、いくつかの関連著書も読んでいるのだが、今回の番組の内容には衝撃を受けた。そしてアフリカ問題に対する自分の不勉強さを痛感した。シリーズの初回の地域紛争問題は見逃してしまったが、2回目のナイジェリアの貧困問題、3回目のモザンビークの子ども兵の問題、4回目の南アメリカエイズ問題は見ることができた。特に子ども兵の第3回の内容が印象に残った。豊かな社会の日本にいると、これらアフリカの悲劇がこの同時代に現在進行形で存在していることが信じられない。
 まず第二回。世界有数の産油国であるナイジェリアでは、その利益の多くは欧米などの石油メジャーが搾取し、そして残り分は地元の有力者(政治家など)の横領によって消える。地域住民は最貧状態のなか、石油汚染に苦しんでいる。そして貧困に絶望する若者らの多くが、過激な反政府ゲリラに引き寄せられていく。海外企業の搾取と国内政治の不正の構図のなかで、貧困に苦しむ住民らが反政府活動として爆弾でも使えば、今の風潮なら、それはテロ行為と言われてしまうのだろう。そして国際社会は反政府ゲリラを「テロ=悪」と激しく糾弾し、ブッシュ大統領などは「テロ行為には屈しない」と息巻くだろう。しかし今回の番組は、本当の悪者は一体だれなのかを再考させられる。
 第三回。モザンビークの反政府ゲリラは、村々の子どもたちを誘拐し、麻薬や暴力で「教育」し、子ども兵に仕立て、紛争の最前線に立たせている。今回の番組では、8歳で誘拐され、子ども兵になった少年のことが紹介される。彼は救出された後も心を病み、そして最後は命を落としてしまう。なぜ子どもを兵隊にするのか? 番組のゲリラ元幹部の証言によると「子どもの方が体力があるから」という。もちろん、子どもの方が教育で洗脳しやすいからであろう。反政府ゲリラをかつて支援していたのが南アフリカ共和国であり、かつてアメリカや日本はこの国を「反共の砦」として支援してきた。子ども兵の源泉は、かつての冷戦構造下で、西側陣営を死守しようとするアメリカや日本だったりする。アフリカの子ども兵の問題は、われわれ日本人にも無関係ではないのだ。
 第四回。南アフリカ共和国には、世界で最も多い530万人ものエイズ患者がいる。10年前に治療薬が開発され、今やエイズは不治の病ではないが、高い特許料に阻まれて、貧困に生きる国民らには薬が行き渡っていない。お金さえあれば救える命が、貧困ゆえに命を落としていく。南アでは年に40万人が亡くなっているという。自由貿易の拡大とともに、アメリカなどからの知的所有権保護圧力が増したことにより、薬の特許料の問題は、今後ますます解決が難しくなっていくだろう。貧困に苦しむ人たちは金儲けルールの犠牲になり、死んでいく。経済のグローバル化で富の流通が世界規模で活発化し、われわれはその恩恵を享受している。しかし一方でグローバリゼーションの犠牲となり死んでいく人たちもいる。われわれ先進国にいきる人間は、この現実に何もできないとしても、少なくとも自覚はしなければならない。
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