一つの妖怪が世界を徘徊している、――グローバリゼーションの妖怪が。

一つの妖怪が世界を徘徊している、――グローバリゼーションの妖怪が。

 この言葉はもちろん有名なマルクスの言葉「一つの妖怪がヨーロッパを徘徊している、――共産主義の妖怪が」(共産党宣言)をもじったものである。マルクス主義とグローバリゼーションが関係があると言いたいからもじったわけではない。単に、今の圧倒的なグローバル化の進展を表す表現として、このもじり方がしっくりときて、面白いからもじっただけである。
 グローバリゼーション、グローバル化という言葉が世に溢れている。言葉が溢れているだけでなく、実際、経済や政治などの分野での国際化が急速に進んでいる。しかし、グローバル化が進んでいることは分かるが、それがどうして進んだのか、どのような背景があるのか、この圧倒的な力の源泉は何なのかの言説は少ないように感じる。ほとんどの書物はグローバル化を所与のものとしてそこから話を展開しているが、それがどうして進展したのか等の分析は少ない。あったとしてもアメリカの覇権戦略と絡める、やや安易な議論が多い。もちろんその要素は否定しないが、議論が雑だし、実態はいろいろな要素が絡み合っているような気がする。
 今後の世界の動きを予想する上で、その背景分析をする作業は不可欠だ。グローバリゼーションの、作家の佐藤優氏の言葉を借りれば「内在的論理」を分析し把握することでしか今後の展開は見えない。その作業が終わったら、わたし個人も、その中でどう生きていけばいいのかの生存戦略が見えてくるはずだ。わたし自身の重要な課題として、これから作業を進めていきたい。
 最後に。マルクスの言葉を引用したが、わたしは共産主義者ではまったくないことを強調しておきたい。
 逆に、未だに残る共産主義者の方々に良い印象をもっていない。わたしの出会った共産主義者の方々は人格破綻者ばかりであった(もちろん共産主義者すべてそうだ、とまでは言わない)。性的犯罪で、本当に犯罪者となった人もいた。
 そんな人々との関わりの中で、私は徹底的に共産主義者の人が嫌いになったわけだが、しかし共産主義思想自体はもっと勉強してみたいと思っている。もちろん共産主義者の人たちみたいに宗教や運動としてではなく、学問として科学的に勉強してみたい。マルクスをはじめとする共産主義思想を徹底的に分析し相対化し、そのエッセンスをわたしの社会構想の参考にしたいからだ。
 また孫子の兵法「彼れを知り己れを知らば、百戦して危うからず」ではないが、共産主義思想を研究し知ることで、今に残る共産主義者の人たちとの戦いにも今後も勝ち続けることができると思っている。
 ただ順番としては、やはりヴェーバーなどの自由主義陣営の研究の方がどうしても優先順位が高くなってしまうんだけど。