「21世紀の倫理を考える①」(勉強会での発言要旨)

 先日、ある場で、現代社会の状況について30分程度のスピーチをする機会があった。好評を得たこともあり、その内容をここにアップしたい。なお文章化するにあたり、一部加筆・修正していることを明記する。

1.ブッシュ大統領と民主主義

 それではわたしのほうから「21世紀の倫理を考える」という、やや大それたタイトルで話をさせていただきます。
 さっそく本題にはいりますが、まず問題提起、最近気になっている言葉について話します。わたし、ここ5年くらいずっと疑問に思っていたことをですね、最近、アメリカのブッシュ大統領がストレートに表現していたので、ここに引用します。
「中東で民主主義を推進する」
 これは2005年2月、ブッシュ大統領が一般教書演説をしたときの発言です。一般教書演説は、2期目のブッシュ政権の政策方針の表明でして、アメリカ政府の動向は世界の情勢・経済などに大きな影響を与えますので、いつもできるだけ精読するようにしています。朝日新聞などはこの演説を聴いて、「『自由』という単語が42回も出てきた。ブッシュは自由信奉者だ」と騒いでいましたが、わたしはそのことよりも演説の真ん中にあったこの一言が一番印象に残りました。
 なぜ引っかかったかと申しますと、ブッシュ大統領は民主主義という理念に多大な価値を与えているからですね。ご存知のとおり、イラク戦争でたくさんの現地の人たち、米兵が亡くなりましたが、ブッシュ大統領はその多大な犠牲を出しても、民主主義の方が大切だ、といっているのです。
しかしわたしなんかは、民主主義ってそんなに大したものなのだろうか、そんな大したものじゃないよ、と思うわけです。

2.民主主義をめぐる日本の風景

 もうすこし民主主義の話をさせていただきますが、民主主義をめぐる日本の、最近の風景について見たいと思います。
 まずすぐ思いつくのが、「住民参加」「協働のまち作り」という言葉の氾濫です。インターネットでこの言葉を検索すると、くさるほど引っかかってきます。うんざりしますね。特に、役所の政策方針に溢れています。これだけ行政が取り入れるということは、この言葉が国民に肯定的に、「良いこっちゃ」と受け取られている証拠です。
 また「庶民、主婦の感覚からの政治を!」というニュアンスの言葉もよく聞きます。最近目にしたのは、橋本元首相日本歯科医師会からの1臆円献金の問題で、朝日新聞などは社説で「庶民の感覚からは考えられない行為」と批判していた記憶があります。庶民の感覚が正しくて、橋本元首相の感覚はおかしい、と朝日はいっているわけです。
 また、よく選挙演説で言われていますね。かの有名な田中真紀子議員は、「主婦の感覚からの政治!」と言って選挙演説をして議員になりました。田中議員の外務大臣時代の仕事を見ますと、どこが「主婦の感覚からの政治!」なのかまったく理解できませんが、だいたい「世の中には、家族、使用人と敵しかいない」と公言する方のどこが主婦の感覚なのだろうかと思いますが、いずれにせよ、「主婦の感覚からの政治!」というキャッチフレーズが一般に受け入れられ、国民の感覚やら意思に基づく政治を良しとする風潮が、この日本を覆っていることは確実です。
 しかしわたしは、国民の意思に基づく政治で、本当に良い社会、幸せな社会が作れるのだろうか、と疑問に思うわけです。民主主義思想自体への疑問です。
(つづく)
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