ボルト、ドーピング大丈夫か?

 陸上男子百メートル決勝でボルト(ジャマイカ)が9秒69の世界新で初の金メダルをとった。身長196センチ、体重86キロの肉体を生かした大きなストライドで、最後の20メートルを流し、両手を広げ、胸をたたいてフィニッシュした。にもかかわらず、自身の世界記録を0秒03短縮。
 陸上男子2百メートル決勝でも、またもやウサイン・ボルト(ジャマイカ)が世界新記録となる19秒30で優勝した。これまでの200メートルの世界記録は、不滅の記録といわれていたマイケル・ジョンソン(米国)が持っていた19秒32。ボルトは、自己ベスト19秒67だったが、それを大舞台で0.37も上回った。ボルトはこれで、1984年のカール・ルイス(米国)以来となる五輪男子短距離2冠を達成。

 異次元の早さだと思った。中盤から後半にかけての爆発力がとても人間ワザとは思えない。他の選手と比べると、大人と子供のかけっこほどの差があると見えた。まさに「超人!」だ。
 
 見ていて興奮したが、ただ、疑問も残った。

 ボルト、ドーピング大丈夫か?
 すご過ぎて、人間のトレーニングで到達できる領域ではないように見えた。特に中盤の爆発力は、とても人間ワザとは思えない。たとえて言えば、ソウルオリンピックで優勝(後に剥奪)したベン・ジョンソンロケットスタートの爆発力と近いものを感じてしまった。
 200mの短距離走で、この短期間に自己記録を0.37も縮めることなんてあるのだろうか。素人がトレーニングを始めた初期段階ではこの程度ならあり得ると思うが、19秒台のハイレベルの中でこんなことはあるのだろうか?

 根拠はまったくない。ただ見ていて直感的にこう感じた。

 ボルト、ドーピング大丈夫か?

 短距離走のドーピングはベン・ジョンソンマリオン・ジョーンズなど頻発している。先のアテネ五輪男子100m金メダルのガトリン(米)も薬物違反の過去が発覚した。驚異的な世界新記録を樹立したフローレンス・ジョイナー薬物疑惑を指摘され続けていた(彼女は38歳の若さで急死してしまった)。一般的には筋肉増強剤のステロイド、最近では遺伝子操作なども研究されているという。恐ろしい話だ。そんなニュースも伝えられていたので、余計にそんなことを思ってしまった。

 ドーピング隠蔽技術も進んでいるといわれているから、ボルトに関してもすぐには発覚しないかもしれない。しかし今後の検査でいつか引っかかるときがくるのでは? そんなとき、彼の人生はどうなっていくのだろう。邪推にもとづく邪推で勝手に心配してしまった。他のジャマイカ勢の選手たちの走りを見ていても、少し感じてしまった。

 ボルトだけは別格で、彼は完全にシロ、それなのにこの走り、この記録。それなら本当にすごい選手だねぇ〜、で終わるのだが。

 昔の共産主義国では国家をあげてドーピングを奨励していた。冷戦構造崩壊後、それを支えた医師たちが西側諸国に散らばり、今度は西側諸国でドーピングの手助けをやっているという指摘も聞いたことがある。アメリカ大リークでも、ドーピングは常態化している。

 スポーツを純粋に楽しむことができない状況になってきたなぁ。