榊原英資「為替がわかれば世界がわかる」
為替がわかれば世界がわかる (文春文庫) | |
榊原 英資 おすすめ平均 財務官としての仕事が書かれているだけ 情報をどのように扱うか。 政・経・軍事・通貨を一体不可分で考える 為替と経済の関係を知りたい人へ ミスター円と呼ばれた男 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ドイツ生まれ歴史家、A・G・フランク
世界経済の中心が再び欧米からアジアにシフトしてきている
二〇世紀末から二一世紀にかけて歴史の大きな流れを「リオリエント」現象と呼んでいる。
1820年の時点で、中国とインドの人口の合計は当時の世界人口の55.1%、GDPの合計は世界全体の、実に、44.7%をしめていたのです。(11p)
世界中で取引される為替の量は1日150兆円を超え200兆円くらいだと言われています。したがって為替当局といえども市場を支配する力は全く持っていないのです。(28p)
あるディーラーは為替市場での売買を決定するのは「勘が50%、チャート20%、ファンダメンタルズ30%」と言っていました。(139p)
人と人が直接会うというフィジカル・コンタクトの重要性は、いくら情報通信機器が開発されても決してなくなることはない…その人が言葉にしたこと、あえてしなかったこと、何も喋らなくても、その表情が如実に物語っていたもの、身体の動き、呼吸のリズム、その他すべてから体温のある多くの情報を得ることができる。だからこそ、個人的な人脈ネットワークを持ち、定期的に直接会うこと。これはきわめて重要なことなのです。(166p)
物事は不確実で、人間はかならず間違う。だからその間違いを認めて、それをつねに修正していくオープン・ソサエティこそ理想の社会である。(カール・ポパー、33p)
(リーダーは)その意思決定のプロセスにおいては、あらゆる情報を集め、さまざまな角度から分析を行うことが必須である。そして、そういう場面でリーダーはグッド・リスナー(良い聞き手)でなくてはならない。…ロバート・ルービンが「世の中たしかなものなど決して存在せず、すべての現象は確率論的なものである」という哲学をもっている…その時点で、集められるだけ集めた情報を前提にすればベストだと考えられた判断ではあっても、新しい、今まで考えもしなかった情報が一つ入ってくれば、直ちに政策は変更しなくてはならない。東洋的に言えば「君子豹変」である。人間の持っている基本的哲学、あるいは、生き方等はそう簡単に変わるものでも、変わるべきものでもないが、政策や経営戦略は、新たな現実の展開があった場合には変更していかなくてはならいのである。(214-215p)
自然資源管理における適応型管理(Adaptive Management、順応型管理)と同じ発想だな。適応型管理は1990年以降に提唱されたシステムだから、もしかして適応型管理の思想系譜の出発点はカール・ポパーなのかもしれない。
リーダーは事前に「適時必要なら変更していく」という方針を明確に打ち出さなければいけない。それがない場合は、「うちのトップは方針をころころ変える」「軸がない」などと映り、信用を失う。
現実というものが限りなく豊かなもので、そこにこそ学問の原点があるのだとうことを忘れて、乾いた理論で現実を切ってしまうと、とんでもない政策分析や提言をすることになりかねない。(215-216p)
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