國貞克則「決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法」
決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44) (朝日新書) | |
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普段の仕事で団体経理の責任者をやっているので、普段ルーティンで扱っている複式簿記が実際はどういう意味をもっているのかの一端が分かり、とても勉強になった。
何よりも分かりやすい。ただ、複式簿記に馴染みのない人はこの本をどう読むのだろう? やはり少し難しく感じるのだろうか?
この本の特徴は、財務三表(貸借対照表BS、損益計算書PL、キャッシュフロー計算書CS)がそれぞれつながっていると、イメージしやすいように図的に関係付けて説明しているから分かりやすい。
本書の流れとしては、会社を一から作るとき、財務三表(BS、PL、CS)がどのように組み上げられていくかを丁寧に解説する。ここでは漆器を販売する会社を立ち上げるという仮定のもと、資本金の調達から事務用品の購入、商品の買付け、売上げまで一つ一つ丁寧に説明してくれる。この流れの中から、財務三表のつながりが見えてくる。
起業したい若者向けの本でもある。非常に実践的だ。
他に「会社は、「お金を集めてきて」、「そのお金を何かに投資し」、「利益を上げる」という3つの活動をしています」(13p)など、言われて見ればその通りのハッとさせられる指摘も多い。経費と売上高の関係を考えること(31p)、中小企業の赤字隠しのポイント(174p)、PL、BSは操作できるがCSはごまかすのが難しい(182p)など経営者や監査者が知るべきポイントなどふんだんに盛り込まれている。
個人的な最大の収穫は、苦手だったキャッシュフロー計算書(CS)の理解が進んだことだろう。
とにかく社会人の皆さんにお勧めの本です。
(私の本書の評価★★★★★)
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竹中平蔵「竹中式マトリクス勉強法」
竹中式マトリクス勉強法 | |
竹中 平蔵 おすすめ平均 少しヒントがほしいときにお薦めします 肩透かしをくらう 気軽に読みやすい本 努力の大切さ 学者の書いた「自己啓発書」 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書のツボは次の点であろう。つまり勉強に向かう視点として、「ビジネスや政治の場で闘うための勉強/人間力を鍛えるための勉強」と分け、またそれを「天井がある勉強/天井のない勉強」と分けてそれらをマトリクス表示し、私たちが取り組むべき勉強の中身を一目瞭然にするのである。このマトリクス表があれば今われわれが何をすべきなのかすぐ分かり、長期戦の勉強にありがちな、途中で自分が何をやっているのか分からなくなってモチベーションが下がったり、その時関心のあることに浮気をしたりすることも少なくなるだろう。まずこのマトリクス法に関心した。
続きを読むボルト、ドーピング大丈夫か?
陸上男子百メートル決勝でボルト(ジャマイカ)が9秒69の世界新で初の金メダルをとった。身長196センチ、体重86キロの肉体を生かした大きなストライドで、最後の20メートルを流し、両手を広げ、胸をたたいてフィニッシュした。にもかかわらず、自身の世界記録を0秒03短縮。
陸上男子2百メートル決勝でも、またもやウサイン・ボルト(ジャマイカ)が世界新記録となる19秒30で優勝した。これまでの200メートルの世界記録は、不滅の記録といわれていたマイケル・ジョンソン(米国)が持っていた19秒32。ボルトは、自己ベスト19秒67だったが、それを大舞台で0.37も上回った。ボルトはこれで、1984年のカール・ルイス(米国)以来となる五輪男子短距離2冠を達成。
異次元の早さだと思った。中盤から後半にかけての爆発力がとても人間ワザとは思えない。他の選手と比べると、大人と子供のかけっこほどの差があると見えた。まさに「超人!」だ。
見ていて興奮したが、ただ、疑問も残った。
ボルト、ドーピング大丈夫か?
続きを読む勝ちに徹した石井慧、理想で負けた塚田真希②(日本「柔道」から世界の「Judo」へのコペルニクス的転換)
日本古来の「柔道」は、一本勝ちに徹底的にこだわってきた。どんなにポイントで有利になっていても、最後まで一本勝ちにこだわる。最近の選手で言えば、井上康生や鈴木桂治の柔道スタイルである。彼らの柔道は見ていてすがすがしいし、美しい大技が決まれば、スカッとする。相手がどんな相手でも、自分の良いところを出す柔道をする。そんな美しい理想の上にあるのがこれまでの日本の「柔道」だったのだ。
しかし最近の国際ルールの変化はめざましい。第一に、返し技の判定が甘くなった。たとえば先の世界選手権で鈴木桂治は大外刈で相手を倒したのに、相手側の一本となり負けた。大外刈で相手が倒れたあと、相手が鈴木選手を転がしたからである。これまでのルールでは、先手で技を決めたのは鈴木選手なので、何の迷いもなく、鈴木桂治選手の一本勝ちだった。しかし今の国際ルールでは、もつれたとき最後に背中をついたほうが負けるルールになってしまったのである。せっかく立っている状態から豪快に投げても、投げた勢いを利用して相手に最後に転がされたら、豪快に投げた方が負けてしまうのである。
続きを読む勝ちに徹した石井慧、理想で負けた塚田真希①(日本「柔道」から世界の「Judo」へのコペルニクス的転換)
柔道最終日に、男子100キロ超級で日本の石井慧(国士舘大学)が、危なげない柔道で優勝した。
石井慧は勝ちに徹していた。一本勝ちを狙うというよりも、したたかな計算で勝つ柔道に徹していた。初戦から決勝までの戦いで、リスクのある大技は少なかった。豪快な一本勝ちを狙う大技に出れば、返されたり、すかされたりするリスクが伴う。これまでの日本柔道は一本勝ちを最高の価値と認め、リスクをとって大技に挑んでいく柔道だった。しかし石井は違った。
攻めていないわけではない。左の釣手を盛んに動かしながら、前後、左右にたくみに動き、小内、大外、大内という足技を繰り出す。常に先手、先手で攻めている。試合の終盤にさしかかっても、猛練習で身につけたスタミナで動きはほとんど落ちない。石井は終始、動き続け、攻め続けているように見えた。
山崎豊子「華麗なる一族〈上・中・下巻〉」
華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫) | |
山崎 豊子 おすすめ平均 名作です! ドラマを見た人も原作の重厚な文章を味わって欲しい 読み始めたら止まらない 政官財、家族、男女が縦横に絡み合う大河ドラマ 「悪」の魅力。でも、それが単純な「悪」とはいえないのが山崎作品の魅力。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
個人的には、一族の力を増大させ企業グループを発展させるための、「閨閥づくり」という手法が本書を読んで印象に残った。閨閥(けいばつ)という言葉はわたしは初めて聞く言葉だったのが、妻の親類を中心とする勢力のことである。本書では、長女を大蔵官僚と結婚させ、次女を政治家の親類を結婚させようとする万俵家(まんぴょうけ)の事例が描かれているが、読んでいると、確かに「閨閥づくり」は企業の発展させていくために重要な手法と思えてくる。もっとも万俵家は閨閥づくりだけではなく、長男・次男をも政略結婚させているので、子息子女を持ち駒に一族を挙げて人脈を張り巡らしているといえよう。
一族の子息子女を持ち駒に人脈を広げていく手法は、実際の財界や政治家の世界では当然のこととして行われているのかもしれない。政略のための、お見合い結婚なんて信じられないと個人的には思うが、「一族のため」という錦の旗のもとで周囲が突っ走り当事者はそれに従うしかないのかもしれない。そういう政略結婚をしているから、夫婦あいだに本来あるべき信頼関係や暖かさがなく、夫は浮気したり妾を囲ったり仮面夫婦だったりするのかもしれない(実例を知っているわけではないが)。そう考えると家柄が良いと言われている人たちも、カネもあり権力もあるかもしれないが、心の中は孤独で、可愛そうな人たちなのかもしれない。そのような世界がもしあるなら、気が弱く、生活の面では超保守的なわたしには絶対無理な世界だ。
石城謙吉「イワナの謎を追う」
イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272) | |
石城 謙吉 岩波書店 1984-07 売り上げランキング : 129265 おすすめ平均 すぐれたフィールド・ノートです 筑波大附属駒場中学の2004年度冬期休暇の課題図書 イワナを釣ったことがない人にもお薦め Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書の成果として整理すると、
①白い斑点=アメマス(エゾイワナ)、赤い斑点=オショロコマ(カラフトイワナ)という分類ができること
②上流域にオショロコマ、下流域にアメマスと棲み分けしていることを実証的に説明したこと
③オショロコマとアメマスの勢力争いは新興勢力のアメマスに分がありそうなこと
この3点に説明できるであろう。
たとえば③の説明では、 続きを読む