村上春樹「ノルウェイの森(上・下)」
ノルウェイの森 上 | |
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主人公は大学生・渡辺。友人の彼女だった直子と肉体関係をもつが、この関係は恋愛と呼ぶにはあまりに脆く、込み入っていて一筋縄ではいかない。苦悩する主人公の前に現れるのが緑(みどり)という同じ大学の女の子。二人は互いに惹かれあうのだが、緑にもステディな関係の彼氏がいて・・・という感じで、基本的にはこの三人の三角関係で物語が進んでいく。
この本を最初に読んだのは、今から11年前のわたしが大学2年生の頃。所属していた探検部の面々と岩手県住田町の洞窟合宿にいったときだ。この合宿は日程的にかなり余裕があって、洞窟もぐりのほかに、宿泊場所の町の公民館でゆっくりする時間がたくさんあった。そこで、わたしはこの「ノルウェイの森」を読んだ。
それは夕食前のまどろみの中だった。わたしたち探険メンバー8名は、20畳ほどの公民館の大部屋で、それぞれが思い思いの位置にシュラフ(寝袋)をひいて横になり、本を読んでいた。暑い日で、トランクス一丁となって涼んでいる者もいる。蝉が「ミーン、ミーン」と鳴き、開け放たれた窓からは夕日が強く差し込んでいた。カセットテープからは徳永英明の「最後の言い訳」が流れている。
わたしは激しい喪失感に襲われていた。心にぽっかりと穴が空いたようで、しばらく窓越しに差し込む夕日の光を見続けた。生きつづけることを望み祈った主人公・渡辺の想いは届かず、直子は自殺した。渡辺には、直子の心を支えつづけることはできなかった。
しかし悲しいストーリーだとは思わなかった。ただそこには、圧倒的な喪失感だけがあった。わたし自身のプライベートなこともあったから余計に激しく心が揺さぶられたのかもしれない。一日の炎暑で憔悴しきった公民館の部屋の中で、徳永英明の「最後の言い訳」がいつまでも流れていた。
(私の本書の評価★★★★★)
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