凡人という名の努力の天才(NHKプロフェッショナル・石井裕氏の回を見て)

 NHKのプロフェッショナルという番組を見た。この番組は、さまざまな分野でいま先頭を走っている人たちを現在進行形で追い、そのプロフェッショナリズムから学ぶという内容で、ときどき面白い人が登場する。今回もそうだった。
 今回の主人公は、アメリカの大学で活躍する石井裕氏。石井氏は、理学系で競争がもっとも激しいと言われている名門・マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、コンピューターの分野の専門家である。マウスで動かすタイプの今の主流派PCではなく、未来系として、「tangible bits」という言葉で表現していたが、いろいろなモノを触りながら体感としてPCを動かしていくという技術開発の研究している人だ。わたしのように森づくりの仕事をしている眼から見れば、石井氏の職場や研究内容はまったく別の星の話のように聞こえてしまうのだが、そういった外見的なことではなく、一人の人間の生き方として共感させられるものがあった。
 一番印象に残った言葉は、「自分は凡人」という言葉だ。名門中の名門のMITの教授なのだからさぞかし天才なんだろうなぁと勝手に思っていたが、彼の自己評価は「凡人」らしい。そして同僚の天才達に囲まれながら対等に仕事をしていくためには、人よりも2,3倍働かなければいけないと決意し、それを実践している。夜も遅く、休日も仕事だ。
 もちろん「石井氏=凡人」かどうかは自己評価だけなので客観的に判断してどうかは分からないが、凡人認識から努力家へむかうベクトルがとても前向きで素晴らしいと思った。己の凡人ぶりに嘆き悲しみフェードアウトしていくのではなく、そこから逃げずにスーパー努力で立ち向っていく、その前向きで、エネルギッシュな精神に賛辞を送りたくなったし、わたしも見習わなければと思った。
 考えて見るとこれまで大きな仕事をしてきた人は皆努力を惜しまなかった。発明王エジソンの「天才は1%のひらめきと99%の努力」の言葉が有名なように努力なくして偉大な発明もないし、大きな仕事もないのである(もっともエジソンの言葉は本人の言いたかった趣旨とは違うという話もあるが)。喜劇王チャップリンもモーレツ仕事人間だった。
 今思い出したのだが、昔の同番組で棋士羽生善治氏が登場したとき、彼が「才能とは、一瞬のひらめきやきらめきではなく、情熱や努力を継続できる力だ」というような発言をしていた。彼ほどの才能に恵まれた人物ももってしても、ひらめきではなく「継続力」「努力」を重視している姿を見て大変驚かされた。そして同時に、わたしのような凡人でも頑張れば少しは一線級で勝負できる余地はあるんだと勇気づけられたのだった。もちろん、わたしなんかは石井氏やエジソンなどに比べてスーパーが付くほどの凡人だから、それこそ人よりも5倍くらい働かなければいけないんだけどなぁ。終りなき日常、日常、日常。これをどう無駄にせずコツコツと頑張るかにすべてがかかっている。
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