林業はつらいよ

 昨日、農家回りで造林事業の推進をしていたら、一人の農家にドキッとすることを言われた。
「お前、そりゃ森の公益的機能は分かるけど、やっぱり少しくらいはカネにならないと魅力はないわな」
 森林管理の仕事に携わる者として、この指摘が一番つらい。フーテンの寅さん流に言うと、「おいちゃん、それをいっちゃぁ、おしめぇよ」って感じである。
 外材が強い今の状況では、日本で森の管理をして間伐材、主伐材を出しても、安く買い叩かれる。一生懸命売っても、主伐までにかかった保育費を回収できないのは当然だが、最終伐期の伐採経費すら出ない場合もある。これなら誰も森の管理なんてしたがらない。わたしだってそうだ。
 もちろん林業業界の側も、補助金依存体質(これは本当に深刻だ、これは昨今の環境税運動につながっている)の改善や、木材の流通ルートをもっとクリアーにして健全な市場競争をやるなど、やるべきことはたくさんある。一度、今の森林管理体制をすべてチャラにして、再構築するほどの改革が今の林業界には必要だ。しかし一方で、林業界サイドの問題を解決すればいまの森林問題が解決するかと問われれば、そうではないと思う。グローバル化経済のなかで価格競争をすれば、立木の成長量が早く、労賃が安かったり、大規模に林業機械を使って効率的にできる国が勝つにきまっている。木材の世界では、日本は条件不利地だ。
 かといって森を放っておくわけにもいかない。一度、人工的に植えてしまった森は、その後、下刈や間伐(間引き)などの作業が必要だ。これをやらねば、いわゆる線香林といわれるひょろくて災害に弱い森になってしまう。日本の森林の4割は人工林なので、人手を欲している森はそこかしこに溢れている。人工林を天然林に誘導していくとしても、人手は必要だ。
 しかしいまの木材市況では、森の管理をやってもお金がかかるばかりなので、多くの森林所有者は山の手入れをしようとしない。いまの日本の森の課題は、森林伐採の問題ではなく、森林の劣化の問題なのである。この森林劣化の問題は、われわれは鋭く認識すべきだ。
 本当にこのままで良いのだろうか。知り合いの森林所有者が言っていた「森林総合業」が、今後の森を考えていく上で重要なキーワードと思う。
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