本日の一言(衣食足りて礼節を知る)

 幸いなことに、地域の農家の方々と仲良くさせてもらっている。
 仕事で農家回りをした時などは、立ち寄ると「おう、来たか。寄ってけ」と声をかけてくれ、長話をすることが多い。自分で言うのもなんだが、特に中高年のおじさんウケしていると思う。昔、研究のために、地域を歩いてインタビューを繰り返していたので、人の話を聞くとか、人の話をうまく引き出すだとかの訓練が、他の人より少しだけできているからかもしれない。または、中高年のおじさん達が興味を持つ、自然や政治のことについて、わたしがそこそこ知っているからかもしれない(それらはかつて私の専門だった)。
 先日、地域の農家のYさんと2時間も立ち話をしてしまった。初めはカラマツの防風林の話をしていたのだが、ひょんなことから途上国の森林保護の話になった。わたしは話す。途上国では、貧しい農民が生活のために森林を伐採し薪にしたり、農地にしたりしている。森林保護と言っても、問題は貧困であるから、法律で無断伐採を規制しても根本的な解決にはならない。農民の生活支援をして貧困を克服することこそが森林保護につながる、と私が力説したときに、Yさんはすかさず言った。
 「それはまさに、衣食足りて礼節を知る、ということだね」
 Yさんの切り返しに、思わず、う〜ん、と唸ってしまった。若い人なら、こんな風に故事名言を使って切り返せないだろう。年配の人ならではの言葉に、感心させられてしまった。
 「衣食足りて礼節を知る」(「管子」)
 これは、中国古代の斉(せい)の国の名宰相であった管仲の言葉である。飢えや寒さの心配がなく、生活が豊かであってこそ、はじめて人は礼儀や節度を知るもの、という意味だ。人間は生活が豊かになれば、道徳意識が自然に高まるものである。衣食が十分であれば、自分の名誉とか恥とかを重くみるようになる。今の時代にも通用する名言だ。
 日々、学ぶことばかりである。私の恩師のK先生は「日々、勉強だ」といつも言っていたが、わたしこそまさに日々から学ばなければいけないと痛感させられた一日だった。
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