民主党に政権担当能力はあるのか?

 いわゆる郵政解散によって衆院選に突入したが、民主党議席を伸ばすのは確実と言われている。小泉首相の支持率が上がっているとの報道もされているが、自民党内でつぶし合いをしてくれるのだから、相対的に民主党が有利になり議席を増やすことは間違いないであろう。民主党だけで過半数が取れるかは微妙だが。民主党議席を伸ばせば、政権交代になるかもしれないし、過半数が取れなくても政権運営への影響力はこれまで以上に高まる。
 しかしここで、もう一度考えて欲しい。われわれは民主党の内実について、どれほどの知識があるのだろうか。岡田克也菅直人小沢一郎鳩山由紀夫などのビッグネーム以外、どれだけの民主党議員をわれわれは知っているのか? クリーン、チーム力などで売っている民主党だが、実際の党の内実についてど我々はほとんど知らない。そんな知らないことだらけの民主党に、我々は本当に政権を任せて良いのだろうか。 
1.民主党内の派閥(グループ)について
 最近、読売新聞政治部 「自民党を壊した男 小泉政権1500日の真実」という面白い本を読んだが、そこに民主党内の派閥抗争について書いてあり、興味を持った。

4103390077自民党を壊した男小泉政権1500日の真実
読売新聞政治部

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 民主党には、ベテラン議員が中心となり、6つの派閥(グループ)が存在している。小沢一郎の旧自由党系グループ(約30人)、横路孝弘の旧社会党系グループ(約30人)、鳩山グループ(約70人)、米沢隆・元民社党委員長の旧民社党系グループ(約40人)、菅直人グループ(約40人)。これに加え、前原誠司などの若手グループ(約30人)もある。
 もっとも民主党の派閥は、事務所を構えて政治資金集めまで行っている自民党の派閥とは違い、がっちりしたものではない。メンバーもかなり重なりあっているし、どのグループも幹部が決めた方針に一致して従うような空気はない(85p)。 
 しかし派閥の顔ぶれを見るだけで分かるように、かつての政党の寄せ集めの観はぬぐえない。たとえば憲法問題で見ても、改憲論の鳩山から護憲論の横路まで幅広い。これで党としてのまとまった憲法見解がまとまるのだろうか?
 加えて心配なのは、党首の岡田克也には、確固たる党内基盤がないことだ。岡田代表民主党のどのグループにも属しておらず、基盤がない。岡田はまだ52歳と若いし、小沢一郎との確執なども頻繁に報じられ、もともとバラバラの民主党をどれだけまとめられるのか疑問だ。今は野党なのでそれほどクローズアップされていないが、もし仮に民主党が政権を取った場合は、この党内バラバラ状況は、非常に大きな問題になるだろう。自民党以上に、「あいまい」政党になる可能性もある。
2.労組依存というアキレス腱
 民主党の最大の問題は、未だに労組を支持基盤にしていることだ。社会党の流れを引き継いでいる政党なのでこれまでは仕方なかったかもしれないが、これからは労組と手を切るくらいの姿勢で望まなければ政権担当能力は疑われるだろう。岡田代表はメディアで「われわれは大きな政府路線、小さな政府路線、どちらでもない。第三の道(Third way)だ」と豪語しているが、本当に第三の道を目指すなら、イギリスのブレア労働党のように、思い切って旧来型の労組とは手を切る必要がある。
 「連合、94年に法案に反対」(朝日新聞、05.8.5)
 これは今話題になっているアスベスト石綿)を規制しようとした動きに、93年当時に、メーカーの労組と連合が反対して法案をつぶしてしまっていたことを報じた記事である。労組側が反対した理由は、関連メーカーの雇用不安のためである。「管理すれば安全。急な規制は雇用不安を招く」そうだ。このような労組の近視眼的で、自分たちのことしか考えていない反対運動により、アスベスト対策は遅れ、多くの人に健康被害を引き起こしてしまった。
 わたしも労働組合に入れられてしまっているが(早く辞める予定だが)、今の労働組合55年体制の残骸であり、もうすでにその役割を終えてしまっていると感じている。自分たちの雇用確保のみが大事で、あとは二の次。自分たちの既得権益を守ろうとしているだけの集団に成り下がってしまった。新聞を見て欲しい。郵政改革をやろうとすれば、郵便局員労働組合全逓)は猛反対。公務員改革をやろうとすれば国公労連や自治労は猛反対。改革にはすべて反対。現状維持が一番! 労組は完全なる「抵抗勢力」だ。
 このような抵抗勢力にぶら下がっている民主党政権担当能力はあるのだろうか? 民主党は本当に政権党になりたいのなら、労組を切って、気迫を見せて欲しい。
3.民主党への期待
 民主党について厳しいコメントを書いたが、これは民主党が嫌いだから書いたわけでも何でもない。わたしはこれまでの選挙で、民主党に投票したことも何度かあった*1。むしろ民主党へ期待しているから、応援する意味も込めてあえて厳しく書かせていただいた。フェア―に見れば、業界や官僚にぶら下がってきた自民党も「抵抗勢力」集団であり、構造改革を含めた政権担当能力があるのか疑わしい。
 最後に自民党と比べて、民主党の方ができそうな改革を一点だけ挙げてみよう。それは地方分権である。地方分権とは、単なる仕事の移譲だけではなく、権限と財源をセットで地方に移譲することを意味する。地方分権の本質は、国家公務員の権限と財源を奪うことなので、これまで戦後50年、国家公務員と仲良く付き合ってヌルヌルやってきた自民党には、なかなかできない改革と思われる。一方、民主党は野党であり、自民党と比べては国家公務員とのしがらみも少ないため、大胆な地方分権ができそうな気がしている。
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*1:ただ私は投票するときには、あくまでもその時点においての各党の政策と社会状況とを照らし合わせて、適合的な政策を出している政党に投票している。いわゆる無党派層なので、民主党支持者ではない。