魚住昭「野中広務 差別と権力」
野中広務 差別と権力 | |
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野中広務の口論の強さは、かつての総会屋のようなエゲツなさを持っている点だ。
…(中西啓介が)発言すると、野中がいきり立った。
「なにーっ。やり方が最初から悪いんだ。聴取もされてないのに記者会見して。だいたいあんた、偉そうなことを言える状況じゃないだろ。俺はあんたの行状を知ってるんだ」…
(船田)「野中さんの脅かし方というか、相手のやりこめ方というのはすごいですよ。中西さんのスキャンダラスな情報が野中さんには相当インプットされていたんじゃないでしょうか。肝心なところでそれをチラチラ出しながら相手の口を封じる、そんなやり方にすごく長けた人だなと思いました。」(232-233p)
野中のこういう面は、彼が根っからのたたき上げだからこそであろう。
大学出のエリートは、このようなエゲツないコミュニケーションを嫌う。大学出のエリートは、口論を戦わせるにしてももっとスマートに、論理と論理を闘い合わせてディベートで打ち勝とうとする。彼らは、もっとも多感な10代後半から20代までの時期に、科学という、論理を磨く訓練を叩き込まれるので、年を取ってもなかなかこの習性が抜けない。いつまでたっても論理を大事にし、真面目にディベート方式で口論しようとする。このようなエリートには、野中的な野獣系の攻撃はさぞ効いたことだろう。
小渕は内閣の要である官房長官に野中を指名した。…
(梶山)「お前ら、見てろよ。小渕内閣は必ず公明と組むぞ。その窓口には野中がなる。あいつがみんな牛耳るんだ。公明票がなければ当選できないから、みんな野中に頭を下げなきゃならなくなる。だからこれから野中が政界を支配する時代がつづく。そうなったら自民党は国民から見放されてしまう」(308-309p)
「このころ野中さんと藤井さんは『ノーさん』『フーさん』と呼び合って親しさをアピールすることで、互いの存在感を高め合っていた。藤井さんは野中さんの紹介がなければ自民党議員とは会おうとしなかったから、野中さんを通さなければ学会側と話ができなくなった。つまり全国の自民党議員が各自の選挙区で二万票の学会票をもらうには、野中さんにお願いするしかない。そのことが野中さんの強大な権力の源になったんです」(312-313p)
公明党との太いパイプを最大限利用して、権力を最大化させる手法は見事としか言いようがない。少し抽象的に言えば、力のある他団体の窓口を自分に一本化することで、他団体の力を自らの力にしてしまい、自分の団体内での権力を格段に高めるという高度な手法だ。
野中広務の手法は、一貫してエゲツない。
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