大下英治「永田町ビッグバンの仕掛人 亀井静香」
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本書には亀井氏の知られざる素顔が描かれている。広島県の貧しい農家に生まれ、学費などで苦労したこと。高校を中退したりして苦労しながら東大に入ったこと。警察官僚の出世街道を驀進していた最中に地盤もないのに政治家へ転身したこと。そして彼の政界での猛烈な仕事ぶり。特に本書では、近年の彼の活躍ぶりが詳述されている。
わたしは政界入り後より、政界以前の彼の生き様に興味をもった。
彼の破天荒なその生き様を見ていると、彼の人間性が透けてくる。第一に能力の高さ。豪放磊落だが、実は繊細で緻密。そして将来を見通す抜群の勘をもっている。これは警察官僚時代の事件捜査で、彼の能力に磨きがかけられたものと思われる。第二に、正義感に溢れ一本気ということ。警察官僚の出世街道をひた走っていた時の突然の政界転身。理由は、浅間山荘事件で逮捕された森恒夫を取り調べているうちに、こういう真面目な人間が極左運動に走るのは日本の政治が悪いからだと分かったからだという。単純すぎるかもしれないが、それだけ正義感に溢れ、まっすぐひたむきな人間なのである。第三に面倒見のよさ。警察官僚時代に、部下の息子の転勤を新幹線ホームまで見送りに行ったエピソード(75-76p)。同僚の息子がグレかけた時に、親に内緒でその息子を呼び出し、懇々と説いて大学に行かせたエピソード(64-65p)。こういう彼の面倒見の良さ、マメさが、彼の周りに人を集めるのだろう。
最後に、彼の学生時代のマルクス評が、なかなか的を得ていて面白かった。
マルクスとレーニンの全集をすべて読んではみたが、あまりマルクス主義に魅かれなかった。理屈では、分かる。しかし、人間の精神性に対するとらえ方がまちがっていると思った。経済の分析としては、優れた面がある。が、人間がなぜ生きるのかを考えた場合、もちろん経済原則に左右されている面もあるが、そればかりではない。その国の文化や伝統や祖先の影響がある。それらを無視して、階級闘争至上主義に走ることはまちがいだと思っていた(42p)
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(私の本書の評価★★★☆☆)
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