香山リカ「ぷちナショナリズム症候群―若者たちのニッポン主義」

ぷちナショナリズム症候群―若者たちのニッポン主義
香山 リカ

中央公論新社 2002-09
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 がっかりする本だ。結論からいうと、この本はお勧めできない。
 まず本を開いて最初に思うことは、1pあたりの文字数が少ないことだ。もしかして内容も薄いのかも、という不安が頭をよぎる。そして読み進めていくと、予感はあたってしまった〜、という失望感に包まれる。俺の貴重な時間を返してくれ、と叫びたくなる。
 サッカーワールドカップで日の丸掲げて熱狂する若者たち、愛子内親王誕生に沸きあがる状況などを挙げて、「こうやってノリでナショナリスティックな行動しているうちに、そのうち日本はナショナリズムの全体国家になるんじゃない」というメッセージを出す。もしかしたら香山の、この危機感は正当なものかもしれない、と私も思う。しかし、本書の内容でそのメッセージを打ち出すには、あまりにも説得力がない。他の書籍からの引用がやたらと多く、香山の骨太の論理構築がまったくない。自分の頭で考えたことが少ない。内容がウスウスなのだ。
 香山リカはもう少し面白い論客だと思っていた。宮台真司神保哲生が司会するインターネット番組「マル激トーク・オン・ディマンド」(http://www.videonews.com/)で香山が出演したときは、もう少し面白い発言していたように思ったのだが・・・。香山は精神科医なので、個人の精神分析をベースとした本を書けば、軽快な文章で読み易いことは確かなので面白い本ができるかもしれない。しかし本書のように、社会現象をいくつかつまみ食いしただけで、社会全体を語られても説得力は低い。社会学者の宮台真司ならもっと上手にこの内容を料理し、説得的に読者に提示できると思う。彼は社会を語る専門家だからだ。香山も自分の専門領域を越えて挑もうとする意志は立派だが、この程度の内容しか出てこないなら、もう少し自分の専門領域で自分を磨くことに奉じるべきと考える。
 なぜこの本はあれほど売れたのか。ワールドカップ直後の「にっぽん」「にっぽん」という空気を引きずっている絶妙なタイミングに、「ぷちナショナリズム」なんて絶妙なタイトルをつけた。これが本書が売れた理由ではないか。
ぷちナショナリズム症候群―若者たちのニッポン主義
(私の本書の評価★☆☆☆☆)

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