環境保全の壁―土地をめぐるセクショナリズム 

 世は環境の時代であり、森林管理の世界には追い風が吹いている。北海道では、魚類保全を目的とした水辺林造成や、二酸化炭素吸収源の話などが注目を浴びている。こうした風潮の中で、森林管理の現場にいる我々も一念発起せねばならないのだが、そこにはいくつかの壁があることも確かだ。ここでは農地などの土地の問題を取り上げたい。

1. 環境保全の最大の障害―農地

 たとえば農地。河川沿いに水辺林造成を計画しても、対象の土地に一部でも農地が引っかかっていたら、途端に実施が難しくなる。農地は農地法によって守られており、農地上の森林造成は厳しく規制されているからだ。農地転用許可が必要であり、この手続きは煩雑で時間がかかり、かつ経費もかさむ。市町村や森林組合の担当者に聞いたところによると、農家の方がせっかく「農地に水辺林を造成したい」と相談に来ても、「これこれの手続きが必要で・・」と説明した途端に「じゃあ、いいや」で話が終わってしまうそうだ。
 確かに農地法は、戦後の農地改革の成果を維持するために一定の役割を果たしてきたのだろう。しかし戦後60年が過ぎようとしている今、農業をめぐる状況も、森林造成をめぐる状況も変わってきている。何が何でも農地は守る、という時代なのだろうか。

2. 適正な土地利用にむけて

 しかしこれは農地だけの問題ではない。森林サイドでも保安林という名の下に、厳しい開発規制の網をかけている。保安林は全国森林面積の36%を占めているから、無視できない存在だ。
 環境保全をはじめ時代のニーズに応えていくためには、流域内の土地利用のあり方を再検討する作業が不可欠だと思う。農地(農地法)、林地(森林法)、河川用地(河川法)などが、セクショナリズムでそれぞれの領域を頑なにガードするのではなく、適正な土地利用のために柔軟に転用していけるようなシステムを構想できないものだろうか。
(© 2005 Haru)(本稿は某会報に寄稿した文を加筆・修正したものである)


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