地球温暖化問題への疑問

二酸化炭素濃度と気温の推移

 新年明けましておめでとうございます。昨年末は仕事が忙しく更新頻度がガタ落ちしてしまいましたが、今年は定期的に更新するように頑張りますので、このブログを可愛がってやってください。
 さて今回は、今、地球環境問題のシンボル的存在になっている地球温暖化問題について考えてみたいと思います。やや込み入った話になるかもしれませんが、できる限り平易に書きたいと思います。

1. 地球温暖化問題とは何か

 地球温暖化問題とは、人間の産業活動によって出された二酸化炭素(CO2)等が原因で地球の温暖化がすすんだとみなし、それを問題視することです。
 事実、この100年で気温が0.5度上昇したことは分かっており、このまま進めば100年後には気温は更に1〜3.5度上昇すると言われています。気温の上昇により、南極・北極の氷河が溶け出し、海面水位もここ数年、年間3ミリずつ上昇していることが確認されています。この影響をモロに受けるのが、今回のスマトラ津波で有名になっているモルディブなどの海抜の低い国々です。インド洋に浮かぶモルディブは海抜わずか2m程度しかなく、IPCCによると100年後には50センチ海面が上昇し、単純計算すると、400年後にはモルディブは海中に沈み国家は消滅します。
 この問題に国際的に対応するため、1992年にブラジルで開かれた地球環境サミットで気候変動枠組み条約が結ばれ、各国で二酸化炭素等の排出量を制限することとしました。日本は2008〜2012年までに、基準年の1990年の排出量まで二酸化炭素等の排出量を落とさなければいけなくなりました。
 来月発行される京都議定書については、なぜ二酸化炭素排出量の多いトップ3(アメリカ、中国、インド)が加わってないのか等の批判はされることでしょうが、これらの疑問はテレビでもやるようになったのでここでは触れないことにします。私の疑問は地球温暖化対策のもっと根本的な部分にあります。

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2. 地球温暖化問題への疑問

 私の疑問を端的に言うと、地球温暖化二酸化炭素は本当に関係あるのだろうか、です。地球温暖化問題とは、人間の産業活動によって出された二酸化炭素(CO2)等が原因で地球の温暖化がすすんだとみなしそれを問題視すること、と先ほど述べました。石油・石炭を燃やすと二酸化炭素が発生しますが、これが大気中に多量に存在すると、宇宙空間に出ていくはずの太陽熱を抱え込んでしまい、大気中の温度を上げます。この特質ゆえに、二酸化炭素温室効果ガスとも呼ばれています*1産業革命以前までは放出される二酸化炭素量もすくなかったため、これらは森林や海が吸収し気温は一定に保たれてきました。しかし産業革命以後、排出される二酸化炭素量は格段に増え、かつ森林伐採などがすすんだため、気温上昇が起こった、これが地球温暖化のこれまでの説明です。しかし、これは本当なのだろうか、と私は思うのです。
 まず第一の疑問は、地球という広大なフィールドでの環境変化を説明するとき、その原因を「温室効果ガス増加」という一つの指標で説明し切れるのであろうか、という点です。もちろん人間の生産活動が自然に与えるインパクトが大きいことは確かとは思いますが、今回の相手は地球という超広域生態系です。この超広域生態系の環境変動(地球温暖化)を考えるとき、果たして人間の生産活動による二酸化炭素等の放出がどれほど効いているのでしょうか? 確かに添付した図を見ると、1880年以降の地球の平均気温と二酸化炭素濃度の上昇ラインはよく似ており、関連性があるようにも見えます。しかしこれも「2つの要素の変化がたまたま似ているだけ」という可能性も排除できません。もしかしたら今回の問題は、二酸化炭素排出の問題が効いているのではなく、他の要因が効いている可能性もあります。これは解明すべき対象があまりにも大きすぎるため、なかなか証明できることではありません。この認識の不確かさの中で、多くの国が膨大な予算を使って二酸化炭素排出規制対策を取り続けることの意義はどれほどあるのか、これが私の第一の疑問です。
 第二の疑問は、近年の地球温暖化温室効果ガスが原因ではなく、地球の長期的な気候変動の一部と考えることはできないか、という点です。地球の温度は、太陽から光エネルギーと、それを受ける地球表面の状態によって決められ、これまで地球は、太陽活動の変動と大陸移動などの地球表面の変動により、温暖期と寒冷期を繰り返してきました。この辺りは私の専門ではないのであまり強くは主張するつもりはないですが、現在の温暖化は、地球の気候変動の一部と考えられないか、と思うのです。この2点の疑問について、政府担当者らは科学的に返答できるのでしょうかねぇ。

3. 自己満足型環境活動からの脱却

 上記のような疑問を抱くのは、地球温暖化の取り組みはもとより、環境保護の取り組み全般的に科学的認識をないがしろにする傾向がある、と感じるからです。環境保全運動の取り組みの効果を科学的認識をベースにしっかり考えないで、自己満足的に活動している団体・個人があまりに多すぎないかということです。これは行政だけの問題ではなく、民間も含めてです。たとえば民間の例では、最近次のような報道がありました。(エサ不足のクマにドングリを
 この団体は、ツキノワグマ保全のために都会から集めた500〜700キロほどの大量のドングリを山に大量に撒いているそうです。500〜700キロのドングリは、すさまじい量です。このような活動は「小動物の異常繁殖や、在来ドングリの遺伝子を乱す危険」があると専門家は指摘していますが、これはシロートでもすぐに思いつくような突っ込みです。しかし、それに気づいているのか否かは定かではないですが、この日本熊森協会という団体はまだこの活動を続けるそうです。この団体のHPも覗いてみましたが、自分たちの活動の効果や、活動のデメリットの部分についての検討が十分に行われていると感じることはできませんでした。
 社会学者の宮台真司は、「(日本の環境運動は)運動当事者の実存の自己満足で終わるケースが・・・多い。・・・やみくもに自分がいいと『思う』ことをやるだけ。良かれという意図は良き結果を保証しません。」と述べていますが、この日本熊森協会のみならず、日本の環境団体の多くがこれに当てはまるのではないかと私は見ています。

4. 21世紀型の環境対策指針「適応型管理(Adaptive Management)」

 この手を議論すると必ず「科学的にはっきりしなければ何もできないのか!」「待ったなしの問題には手をこまねいているだけではないか!」という突っ込みがきます。しかしここではっきりしておきたいのですが、私は科学的に解明されなければ対策を取るべきではない、と主張しているのではありません。待ったなしの問題にはすぐ何らかの手立てをくわえる必要はもちろんあります。地球温暖化問題には何らかの対策をすぐに取るべきです。私の主張の核心を一言で言うと、待ったなしの問題に対してはすぐ対策を取るべきだが、対策の効果を常にモニタリング・検証し、その結果を見ながら対策を修正していくべきだ、というものです。この考え方は適応型管理と呼ばれています。
 適応型管理*2とは、アメリカのクリントン政権時代に導入されたエコシステムマネジメントという環境政策の中軸にくる概念ですが、そんなに難しいものでもありません。定義としては、複雑な連関の相互作用によって組みあがっている自然を相手にするとき、これが絶対の管理法というものはないことをまず認識する。そして生態学等の知見を参考にしながら、常に手探りでコトをすすめながら、自分たちのおこないを再評価し、必要であれば管理方法を修正していく。一言で言うと、「トライアンドエラーの修正主義」というところでしょうか。

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 これまでの日本の行政は、自分達の行いが最善であることとして政策を実施し、問題が起こっても訴訟を恐れて間違いを認めず、居直ってくるのが常でした。予算の付き方も、事業の効果を検証するための予算は付きにくく、もちろん本体事業も修正を前提とした予算配分ではありませんでした。行政だけでなく民間も、たとえば上記の日本熊森協会もモニタリングして事業の効果を検証している気配はありません。しかし、このような修正を前提としない管理方針は、今後の自然資源管理においては限界である、というのが近年の共通認識です。
 いつまでも自己満足型の修正を前提としない環境対策を取っていては、日本の、そして世界の環境はダメになってしまいます。近年急速に発展している生態学などの知見を取り入れて、モニタリングしながら効果のある活動に軌道修正しなければなりません地球温暖化問題も、当面は現在の対策を続けることは致し方ないですが、取り組みの中でモニタリング・検証をし、必要とあらばすぐに修正する適応型管理が望まれます。
© 2005 Haru


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*1:温室効果ガスには、二酸化炭素のほか、メタン・一酸化二窒素・代替フロン3種がある

*2:英語でAdaptive Management、最近日本では「順応型管理」とも訳されている