チェ・ジウ, ペ・ヨンジュン「冬のソナタ」①

冬のソナタ Vol.1【日本語吹替版】 [VHS]
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バップ 2003-08-21
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 職場の先輩に強く勧められ、DVDを貸してもらったので一気に見てしまった。1月9日(土)の午後6時からそのまま朝の5時までが1回戦。力尽きて少し寝て、2回戦は10日(日)午前9時半から午後5時で見終わった。ほぼぶっ通して18時間程度もテレビに張り付いたことになる。途中、お腹が減ってひどかった。中断するのが嫌で、食事らしい食事をとらなかったのだ。何とかしのぐため、みかんを食べまくっていたら逆に具合が悪くなった。
 でも最大の後遺症は目だ。集中して画面を見続けたため、疲労が極限になってもともと弱い目がやられ、未だにひどく痛んで目を開けるのがつらい。何事もほどほどにというのは分かってるんだけど、昔からの悪い癖で、どうも集中するとそこから抜け出せなくなる。無理のきく体じゃないんだけど。


1 「初恋」というテーマ設定について
 全体的に「面白かった」ということを強調しておきたい。だから最後まで休憩もほとんどせず、ぶっ通して見続けた。

 このドラマのテーマは「初恋」。このテーマ設定はやはり心の琴線に触れる。見ていて、思わず自分の初恋がフラッシュバックしてきた。
 作り手側も、「初恋」というテーマをかなり意識している。たとえば初恋時代のシーンは、非常に丁寧に、美しく、美しく描かれている。恋する2人の描き方、そして風景の描き方、どちらも練り上げられた描写になっていてとても素敵だ。思春期のシャイな主人公・ユジン(チェ・ジウ)とチュンサン(ペ・ヨンジュン)。目が合った合わないで照れたり、チュンサンの弾くピアノにうっとりしたり、放送室やごみ掃除の場所での他愛もない会話を楽しんだり、そして些細な一言に傷ついたり怒ったり。高校時代の日常の中で、惹かれあい求め合う、純な二人の心の動きがとても丁寧で、温かい眼差しで描けている。学生服は着ているものの、ユジンにしてもチュンサンにしても彼らの友人達にしても、「こんな大人びた高校生はいないだろう!」とつい突っ込みたくなるが、ここはご愛嬌。ストーリー構成上、高校時代、社会人時代、ユジンの留学後時代と3時代を描かないといけないから仕方がない。まさか時代ごとに役者を変えるわけにはいかないし。

 二人を取り巻く風景も美しい。
 「冬」のソナタだけあって、「雪」「白」をかなり意識している。初雪後の二人のデート。有名な湖の公園でのキスシーンは、雪の白と湖の青とキラキラした日の光がまるで絵画のようで、見とれてしまうくらい美しい。雪のシーンが多いからか、全体的に白く透き通るような雰囲気が画面にはあり、それがまたピュアで汚れのない2人の恋によく似合っている。キスシーンでは、まず手作りの雪だるま同士にキスさせて、次にユジンがチュンサンのほっぺにキス、そして最後にチュンサンがユジンの唇にキスという3段階は、心憎いばかりの展開で、よく脚本が練られていると感じる。唇にキスする時にユジン(チェ・ジウ)は寄り目になるが、その表情はとてもチャーミングだ。
 湖の傍の並木を歩くシーンも頻繁に出てくる。並木には4パターンくらいあり、トドマツのような樹皮で構成されている並木、スギのような樹皮の並木、シラカバの並木とあとわたしの知らない日本にはない樹種の並木がある。並木の間を歩くデートなんて、ベタ過ぎるような気もするが、なぜか冬ソナの雰囲気の中ではよく馴染んでいて、とても美しく感じてしまうから不思議だ。その他にもピアノのある高校の音楽室はうっすらと暗いが、逆にその暗さが甘美なものを感じさせる。

 音楽もこの繊細でピュアなラブストーリーに合っている。人気の高いドラマには名曲がセットなのはドラマ界の一般法則だが、冬ソナもその例に漏れず印象的な曲が多い。主題歌のRyu「最初から今まで」。その他にもピアノ主体の構成となっていて「My Memory」や「初めて」などのきれいで透明感のある曲が、ストーリーの節目節目で流れ、主人公の心象風景を表すのに効果的な役目を果たしている。チュンサンの弾く「初めて」という曲は、このストーリーの重要な仕掛けのひとつになっている。


2 チェ・ジウの美しさ
 ユジン役のチェ・ジウの顔や雰囲気はとても素敵だ。

 チェ・ジウには、ピュアで一途な清き女性のイメージがある。そういう意味で今回のユジン役ははまり役だ。チェ・ジウはデビュー当時演技が下手で悩んでいたそうだが、そんなエピソードは嘘のように、素直で繊細なユジン役を好演している。死んだ初恋の人をずっと想ってきたユジン。工事現場のスキー場で、初恋の彼にそっくりのミニョンに「メガネを外してください」と懇願するシーン。事務所でミニョンをうっとりと見つめるシーン。ミニョンを初恋の彼と勘違いして、喜びで泣き崩れるホテルでのシーン。積年の想いが溢れた時のチェ・ジウの目とその表情を見ていると、われわれにも熱いものが込み上げてくる。初恋をいつまでも忘れることができず、10年経っても過去の思い出の中に生きているユジン役をチェ・ジウは実に見事にこなしている。
 物語の中盤から後半にかけて、ユジン(チェ・ジウ)はミニョン(ペ・ヨンジュン)とサンヒョクとの三角関係の間で揺れ、悩み苦しみいつも涙を流している。その泣きまくりぶりは「北の国から」の蛍ちゃん(中嶋朋子)に匹敵する。大人になった蛍ちゃんは常に不幸に見舞われ、いつも涙を流している。
 死んだ彼氏のことを想い、何度も何度も頬に涙の雫を流すのは、「101回目のプロポーズ」の浅野温子のようだ。「101回目のプロポーズ」とシーンや雰囲気がとても似ているので、もしかしたら冬ソナの脚本家は「101回目のプロポーズ」に影響を受けている人なのかもしれない。

 高校時代を演じている時の、腰まで届くようなロングヘアのチェ・ジウ、設計会社で働いている時のショートカットのチェ・ジウ、フランス留学後のパーマをかけているチェ・ジウ。どの時代の彼女も素敵だが、やっぱり一番はショートカットのチェ・ジウかな。純粋で、一途で、知的で、控えめなその雰囲気がとてもいい
 一昔前、朝のNHKニュースで高橋美鈴という知的なアナウンサーがいて好きだったが(高橋さんは今は体調不良で休養中だって(泣))、この高橋さんとチェ・ジウは雰囲気が少し似ている。調べて見るとチェ・ジウはわたしの一歳年下の34歳。身長は174センチもある。ドラマを見ている限りそんな長身には見えないのは、周りの男性俳優陣の背が高いからか。

 チェ・ジウの生声が聞いてみたくなって、DVDデッキを操作し吹き替えを外してみた。
 チェ・ジウの声の低さにびっくり!
 日本語吹き替え担当の田中美里さんの声とは高低も声質もまったく違う。合唱にたとえるなら、田中さんがソプラノならチェ・ジウはアルトだ。それくらい違う。それに輪をかけて、ペ・ヨンジュンの声は低い。日本語吹き替えと韓国語バージョンとでこれだけ主人公の声質が違うなら、物語の印象もかなり変わってしまうだろう。わたしのイメージはもう田中美里さんの声で出来上がってしまっているのが、今となって思うと、冬ソナは吹き替えじゃなく字幕で見たかったと思う。やはり俳優陣の生声で作品の印象をつかみたいし。 (つづく)