松本人志監督「大日本人」

大日本人 通常盤
大日本人 通常盤神木隆之介 UA 板尾創路

アール・アンド・シー 2007-11-28
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おすすめ平均 star
starヒーロー物、としては悪くなかった?
starこれは恐怖映画だ
starどこが面白いのか解らない

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 松本人志の熱狂的ファンの一人として、彼の映画初作品は見逃すわけにはいかなかった。しかし田舎に住んでいるので映画館に行くチャンスがなく見逃してしまった。結局、今回DVDを借りて見た。
 見終わって、失敗作だと思った。贔屓目にみても、やはり残念ながら失敗作。ただ次作に期待を持たせる内容だった。
 舞台設定は、さすが面白い。大佐藤大(だいさとうまさる)は、電流を体内に通すと巨大化するヒーローで、「大日本人」と呼ばれ、時々日本に現れる巨大怪獣を退治することを仕事としている。この仕事は大佐藤家に代々伝わる伝統的なもので、主人公は6代目となる。かつては地域に重宝され、先祖はお手伝いさんを何人も雇うほどの生活ぶりだった。しかし、軍事力の整った現代においては不要論すら出ており、スポンサーをつけ体に広告を貼り闘ったり、テレビ中継に出たりして食いつないでいる。ストーリーは、現代に生きるこのヒーローをインタビュー形式でドキュメンタリー映像として追う形となっている。
 面白いシーンがないわけではない。「腰だけには広告は貼りたくない」とマネージャーに力説しておきながら、次の決闘シーンでは腰に広告を貼っていたり、「娘を撮影するなら顔にモザイクかけてくれ」という元妻の言葉に激怒して「どういうことや!素でいいじゃないか」みたいなことを言いながら、次のシーンではモザイクどころか音声まで変えた娘が出ていたり。最後の決闘のシーンでは、ウルトラマンみたいなヒーローが怪獣をボコボコニしてパンツまで破いたり。ポイントポイントでは面白い。
 ただそれはあくまでテレビでのショートコントみたいなもので、2時間ものの映画としてみれば、全体ストーリーの作り方があまりに雑だ。何十本のショートコントを無理やりつないで、強引に2時間映画にした印象だ。
 一番いけなかったのは、最後にストーリーを壊してしまったこと。
 「大日本人」不要論に押され、マネージャーからガミガミいわれ、祖父の介護問題を心配し、元妻に冷たくあしらわれ苦悩する大佐藤大だったが、突如現れた赤い獣にボコボコにされ絶対絶命になる。ここまではストーリーは一応あった。しかし松本人志はここからストーリーを壊してしまう。
 突然、介護施設に入っていた祖父が助けに入り、元気な姿で赤い怪獣と闘う(結局負けるが)。挙句の果てには、ウルトラマン親子みたいなのが助けに現れ、大日本人の代わりに、赤い怪獣をボコボコにする。ウルトラマン親子は何の前フリもなく、何の脈絡もなく登場する。ここに来て完全にストーリーがなくなる。
 しかし敢えて深読みすれば、最後のウルトラマン親子のシーンは日本の戦後社会を風刺しているかもしれないと思った(あまりの唐突なシーンだが)。このウルトラマン4人親子は名前を「ステイウィズミー」「スーパージャスティス」などと言い、英語を喋りながら大日本人を救出する。明らかに欧米の白人をイメージさせる。一方、大日本人はボコボコにされた惨めな姿で、日本土着のヒーローの自分を恥ずかしがるようにウルトラマンと接する。「あっ、すいません」「おれ、いいっすよ」などと遠慮するが、結局、ウルトラマンの口車に乗せられ、彼らに従う。この大日本人の姿は、戦後日本人がアメリカに対して抱いていた劣等感や卑屈さ、それを土台にした日米関係そのものではないか、と思った。
(私の評価★★☆☆☆)
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