松本人志監督「大日本人」
大日本人 通常盤 | |
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見終わって、失敗作だと思った。贔屓目にみても、やはり残念ながら失敗作。ただ次作に期待を持たせる内容だった。
舞台設定は、さすが面白い。大佐藤大(だいさとうまさる)は、電流を体内に通すと巨大化するヒーローで、「大日本人」と呼ばれ、時々日本に現れる巨大怪獣を退治することを仕事としている。この仕事は大佐藤家に代々伝わる伝統的なもので、主人公は6代目となる。かつては地域に重宝され、先祖はお手伝いさんを何人も雇うほどの生活ぶりだった。しかし、軍事力の整った現代においては不要論すら出ており、スポンサーをつけ体に広告を貼り闘ったり、テレビ中継に出たりして食いつないでいる。ストーリーは、現代に生きるこのヒーローをインタビュー形式でドキュメンタリー映像として追う形となっている。
面白いシーンがないわけではない。「腰だけには広告は貼りたくない」とマネージャーに力説しておきながら、次の決闘シーンでは腰に広告を貼っていたり、「娘を撮影するなら顔にモザイクかけてくれ」という元妻の言葉に激怒して「どういうことや!素でいいじゃないか」みたいなことを言いながら、次のシーンではモザイクどころか音声まで変えた娘が出ていたり。最後の決闘のシーンでは、ウルトラマンみたいなヒーローが怪獣をボコボコニしてパンツまで破いたり。ポイントポイントでは面白い。
ただそれはあくまでテレビでのショートコントみたいなもので、2時間ものの映画としてみれば、全体ストーリーの作り方があまりに雑だ。何十本のショートコントを無理やりつないで、強引に2時間映画にした印象だ。
一番いけなかったのは、最後にストーリーを壊してしまったこと。
「大日本人」不要論に押され、マネージャーからガミガミいわれ、祖父の介護問題を心配し、元妻に冷たくあしらわれ苦悩する大佐藤大だったが、突如現れた赤い獣にボコボコにされ絶対絶命になる。ここまではストーリーは一応あった。しかし松本人志はここからストーリーを壊してしまう。
突然、介護施設に入っていた祖父が助けに入り、元気な姿で赤い怪獣と闘う(結局負けるが)。挙句の果てには、ウルトラマン親子みたいなのが助けに現れ、大日本人の代わりに、赤い怪獣をボコボコにする。ウルトラマン親子は何の前フリもなく、何の脈絡もなく登場する。ここに来て完全にストーリーがなくなる。
しかし敢えて深読みすれば、最後のウルトラマン親子のシーンは日本の戦後社会を風刺しているかもしれないと思った(あまりの唐突なシーンだが)。このウルトラマン4人親子は名前を「ステイウィズミー」「スーパージャスティス」などと言い、英語を喋りながら大日本人を救出する。明らかに欧米の白人をイメージさせる。一方、大日本人はボコボコにされた惨めな姿で、日本土着のヒーローの自分を恥ずかしがるようにウルトラマンと接する。「あっ、すいません」「おれ、いいっすよ」などと遠慮するが、結局、ウルトラマンの口車に乗せられ、彼らに従う。この大日本人の姿は、戦後日本人がアメリカに対して抱いていた劣等感や卑屈さ、それを土台にした日米関係そのものではないか、と思った。
(私の評価★★☆☆☆)
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