宮崎駿監督「ハウルの動く城」

ハウルの動く城 特別収録版 1/24second付き
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ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2005-11-16
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おすすめ平均 star
star荒地の魔女は最高ですぜ
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 う〜ん、宮崎駿の才能はもはやこれまでかも、と思ってしまった。本作品「ハウルの動く城」のストーリーの時代設定と状況設定はワクワクするものだし、映像は人の表情も風景も相変わらず美しく素敵なのだが、端的にいってストーリーの描き方が雑すぎる。もっというと脚本の完成度が低い。
1 呪いという中軸概念のあつかい方について
 この物語は、主人公の少女ソフィーが魔女の「呪い」で90歳の老婆に変えられてしまうことから、物語が展開していく。この「呪い」は物語の起点であり、そして結末へつながる大切な概念だ。しかし物語上、とても重要なこの「呪い」が、後半部で意味もなく解けたり、また戻ったり、そして最後はなんとなく解けてしまうのである。解説書を読むと、ハウルの動く城で出会う火の悪魔カルシファーとの約束を果たしたことでソフィーの呪いが解けたという理屈らしいのだが、途中で呪いがときどき解ける説明になっていないし、またこの約束→解決の流れがわかりにくく、いつの間にかなんとなく呪いが解けた、みたいに見えてしまう。案山子のカブにかけられた呪いは、なんと、ソフィーがキスをしたら解けてしまった。なんだ、そりゃ。これら「呪い」はこの物語を動かしていく中軸概念なのだから、「呪いの持つ意味は何だったのか」「どのようにして呪いが解けていくか」というあたりを丁寧に描いてほしかった。宮崎アニメのなかでも同様の、謎解き冒険ストーリーである「天空の城ラピュタ 」「千と千尋の神隠し」と比べれば、その描き方の雑さは際立っている。
2 宮崎アニメの声優キャスティングについて
 本作品の声優に関してはいろいろな意見が出されている。「ソフィー役の倍賞千恵子さんは全然役に合っていない」「キムタクは意外とはまり役だった」「美輪明宏荒地の魔女はいい味出していた」などである。わたしも確かに同様の感想をいだく。蛇足だが、美輪明宏は今回の魔女役もよかったが、「もののけ姫」の山犬のボス役も良かった。彼(彼女?)の持つ声の雰囲気は、ファンタジーの世界によく似合う。
 ソフィー役の倍賞千恵子はいただけなかった。雰囲気の作り方はうまいけど、18才の少女の声という設定に無理があるのだ。倍賞氏は「男はつらいよ」のさくら役、「幸福の黄色いハンカチ(1977年)」「遥かなる山の呼び声(1980年)」などの名演など抜群の演技力をもつが、今回のキャストは無理がありすぎた。彼女はもう60代なのである。これは倍賞氏の責任ではなく、キャスティングした制作サイド(宮崎駿氏?)の責任である。声優選びについてはたぶん宮崎駿氏の影響力が大きいと思うが、宮崎アニメにはときどき、この手の声優のミスキャストがある。今回の倍賞さんも明らかにミスキャストだし、「となりのトトロ」のおとうさん役の糸井重里、「耳をすませば」の雫の父役の立花隆は、聞いていてこっちがハラハラするくらいヒドイものだった。糸井重里立花隆は素人なのだから、話題づくりのためとはいえ、いただけないキャスティングだった。アニメの声優は知名度とか、話題づくりのためとかではなく、物語の登場人物のキャラクター設定に合う声を、雰囲気をもつ声優さんを選ぶべきだと思うのだが。蛇足だが、「紅の豚」のポルコ・ロッソ役の森山周一郎、マダム・ジーナ役の加藤登紀子は、「これしかない!」というほど素敵なキャスティングだった。
3 宮崎アニメはもう終わったのか?
 さて最後に冒頭の問いかけに戻ると、「もしかして宮崎駿の才能はここまでかもしれない」けれども、まだ可能性は残されているかもしれない。それは前例があるから。むかし「もののけ姫」を見て「あ〜、宮崎駿はもう終わった」と思ったが、次作で「千と千尋の神隠し」という傑作を見て「宮崎駿ここにあり」と思ったことがある。本作品は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」を原作としたファンタジーである。
(私の評価★★★☆☆)
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