ロビン・ウィリアムズ「グッドモーニング,ベトナム」
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本作品は、ベトナム戦争下のサイゴン基地を舞台に、前線の兵士たちに活気と希望を与えるために奮闘するラジオDJの姿を描いたヒューマン・ドラマである。
1 違和感を覚えたベトナム戦争の描き方
しかし本作品のベトナム戦争との向き合い方には違和感を覚える。つまりあくまでアメリカ側の視点から描かれているということ。アメリカ合衆国の論理、アメリカ人の論理が色濃く出ている。最後の方のシーンでベトナム青年に南ベトナム解放民族戦線の論理を少しは語らせてはいるが、やはり全体的にはアメリカの論理が通徹している。
もちろんジャーナリストの本多勝一氏みたいに、「南ベトナム解放民族戦線(北ベトナムを含む)の視点から描けばすべてOK!」と言いたいわけではない。その後のベトナム社会主義国家が歩んだ道を見てみると、解放戦線を肯定ばかりはしていられない。カンボジアやラオスら周辺国のその後の社会主義体制まで含めると、アメリカのドミノ理論*1による介入も一定の正当性はあるように感じてくる。
2 社会の複雑さを複雑なまま描く作品は不可能なのだろうか
何が言いたいかというと、どっちが正義でどっちが悪みたいな安易な対立構図を作る描き方には共感を覚えないということ。善悪の構図を明確にすればストーリーとしては分かり易いが、社会の描き方としては浅はかと言わざるを得ない。
社会の複雑な現実を、複雑なまま、丁寧に描き出す作品を作ることはできないのだろうか。戦争映画を見たとき、いつもこのことを思う。ミクロな現実からマクロな現実まで幅広く社会を描き出し、様々な評価軸を浮かび上がらせながら、それをひとつのストーリー(流れ)としてつなぎ合わせる。そのような方法論でファクト(事実)に鋭く迫りながらも、一方でエンターテイメント性を担保し、見る者を離さない作品に仕上げる。今までそんな作品は一度も見たことはないが、人生に一度で良いから、わたしはそういう作品に出会ってみたい。そうすれば、わたしは迷いなくその作品を「最高傑作!」と呼ぶであろう。
ベトナム戦争についてのアメリカ映画は多いが、一度、時間があったら、それら映画の時代背景と描き方の違いを調べてみたい。「グッドモーニング,ベトナム」「地獄の黙示録」「プラトーン」「ランボー」らベトナム戦争映画を、時代順に並べて、描き方の違いを分析したら面白い文章になるような気がする。
(私の評価★★☆☆☆)
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