チャールズ・チャップリン「キッド」

キッド・コレクターズ・エディション
B00013F574チャールズ・チャップリン エドナ・パーヴィアンス

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 チャップリン初の長編映画がこの作品である。これまで量産してきた短編映画のアイデアをふんだんに盛り込みつつも、涙、哀愁ありの秀作に仕上がっている。チャップリン31歳の時の作品。16歳の女優ミルドレッド・ハリスと結婚したものの不和となり悩んでいたチャップリンが、ある日、劇場でタップを踏んでいる4歳の子役(ジャッキー・クーガン)に心引かれ、創作意欲がかき立てられオリジナル作品を書いたのがこの作品。
 子役のクーガンの名演が一際目立つ作品だ。石を投げてガラスを割り逃げ回るジャッキー、無理やり孤児院に引き取られそうになり、泣きながら訴えるジャッキー迫真の演技は、映画史上燦然と輝く名演のひとつであろう。
 それでもやはりチャップリンの存在感の大きさはさすがだ。本作品でチャップリンが登場する最初のシーン――廃墟の街を遠くから歩いてくるチャップリンの姿、を見ただけで思わずジーンと来てしまった。独特の浮浪者姿、そしてペンギン歩行、まさにそこにはチャールズ・チャップリンその人がいるのである。
 チャップリンの演技力にはほとほと感心してしまう。サイレント映画全盛の時代なので、会話などの音でごまかすことはできない。表情、全身を使った表現力がすべての世界だ。機械仕掛けのようなチャップリンの動作、器用な指先、ストレートに感情が伝わってくるその表情。どれをとっても信じられないくらい秀でた演技力だ。現代の俳優の方々で、どれだけの人がチャップリンレベルの演技ができるのであろうか。ほとんどいないのではないか。
 昔からチャップリンは好きだったが、大学時代に狂ったように彼の作品を見た。ビデオを何回も巻き戻して、作品「独裁者」の有名な最後の演説シーンの内容を一言一句ノートに書きとめたり、名作「街の灯」のボクシングシーンを何度も見て笑い転げたり、「黄金狂時代」の革靴を食べるシーンでは、ダミーではなく本物の革靴を食べるチャップリンのその姿にプロ根性を感じた。「モダンタイムズ」のラストシーンの荒野の道を歩いていくチャップリンの姿には、チャップリンの生への力強さを感じたりした。
 笑い、反骨精神、純粋さ、不器用さ、やさしさ、哀愁、そして愛。チャップリン作品を見ていると、いつもこんなキーワードが頭に浮かんでくる。
(私の評価★★★★★)
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