デヴィッド・リンチ監督「エレファント・マン」

B00078RT22エレファント・マン 作品生誕25周年ニューマスター版
ジョン・ハート デヴィッド・リンチ アンソニー・ホプキンス アン・バンクロフト

ジェネオン エンタテインメント 2005-02-25
売り上げランキング : 2,385
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 小学生の頃に見て、ショックを受けた作品がこの「エレファント・マン」だ。奇形の主人公の気味悪いメーキャップと、もの悲しいストーリーで私の中に強い印象を残した作品である。
 今回、20年ぶりに改めて「エレファント・マン」を見た。不覚にも、涙してしまった。ストーリーはもちろんのこと、いくつかの印象的な場面やセリフなどもかなり克明に記憶していたのだが、それでも感動してしまった。幼い頃に見た作品を大人になって見ると「なんだ、この程度のものだったのか」と冷めることが多いのだけど…。やはり名画はいい。
 本作品は、デヴィッド・リンチ監督の出世作といえるだろう。身ごもっていた母親が象におそわれ、生まれながらにして極度の奇形になってしまったジョン・メリックこと“象人間(エレファントマン)”が主人公。見世物小屋でムチ打たれる日々に、若き医者がぶらりと訪ねるところからこの物語はひも解かれる。名誉心のため彼に近づく者、金儲のため彼に近づく者、彼を露骨に嫌う者、彼を助ける者、さまざまな人間模様の中で、メリックの人生は流転していく。
 本作品を、あえて白黒映像にしたリンチ監督の判断はさすが。白黒映像にすることで、19世紀イギリスの暗く、どんよりとした雰囲気が伝わってくる。またメリックの迫力のあるメーキャップも白黒だからこそ一層引き立っている。変形した顔を隠すため、片目分だけ穴のあいた布をすっぽりかぶり、街を歩くメリックの姿は、不気味であるとともに、もの悲しくもある。
 途中で悪者が病院内で騒ぐシーンがある。「あれだけ騒いでいるのに、なぜ病院スタッフは気づかないのだろう?」などと突っ込みを入れてはいけない。本作品を全体としてみれば、この部分の失点を補って余りある内容に仕上がっているからだ。当初は見るのも気持ち悪かったメリックが、物語がすすむにつれ、純で愛らしい、一人の青年に見えてくるのは、リンチ監督の真骨頂だろう。クライマックスで、大衆の好奇の目にさらされたメリックは、ついに叫ぶ。
「私は動物ではない、私は人間だ」
 一人の人間として、優しさを求め、友を求め、日常を求めるメリックの姿にわたしは打たれた。人間の価値とは何か、人権とは何かを考えさせられる作品だ。19世紀のロンドンでの実話を基にした、1980年の作品である。
(私の評価★★★★☆)

☆もっと知りたいエレファント・マン

B0001FAGDA人体の不思議シリーズ 素顔のエレファント・マン
ドキュメンタリー

ビデオメーカー 2004-03-26
売り上げランキング : 26,951
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

よかったら投票してください→人気blogランキング