新田次郎「孤高の人 (上・下巻)」
孤高の人 (上巻) | |
新田 次郎 おすすめ平均 新田次郎作品を読むきっかけに 「孤高」とは 最初に読んで、一番好きな作品 加藤文太郎の魅力が引き出せています 何度も繰り返して読んでいる本です。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
孤高の人 (下巻) | |
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この本は、私のヨーロッパアルプス単独登山時の思い出の本だ。フランスのモンブランのグーテ小屋で知り合った、日本人ガイドの美人な姉さんに、「あなたは加藤文太郎ね」と言われて無性に嬉しくなったのを覚えている。
「疲れたよ、こんなに疲れたことはいままで一度もなかった。……だが、とうとうおれは家に帰ったのだ。ゆっくりと眠ることのできるわが家に帰ったのだ」(下巻370p) この言葉を残して死んだ文太郎の姿に、私は、スイス・ツェルマットのキャンプ場のテントの中で、ただただ涙を流した。
今もう一度読み返してみると、「不器用だけど本質的に優しい人」というイメージでひたすら文太郎を描いていく新田の文体には、「主人公をちょっと理想化し過ぎじゃないか」と突っ込みたくなる気もある。しかし、読ませる小説を書くためには、善悪の軸をはっきりさせ、構図を単純にすることが不可欠なのかもしれない。物語をあまり複雑な構図にすると、読み手の頭がついていかなく、しらけムードになってしまうから。司馬遼太郎の代表作「竜馬がゆく」も、竜馬を思いっきり理想化していたし。
(私の本書の評価★★★★☆)