新田次郎「孤高の人 (上・下巻)」

haruo72004-11-02


孤高の人 (上巻)
新田 次郎

おすすめ平均
新田次郎作品を読むきっかけに
「孤高」とは
最初に読んで、一番好きな作品
加藤文太郎の魅力が引き出せています
何度も繰り返して読んでいる本です。

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孤高の人 (下巻)
新田 次郎

おすすめ平均
登山者は読んでみて

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 昭和初期、ヒマラヤ征服を夢に見て、単独で日本アルプスを飛び歩いた実在の人物「加藤文太郎」が主人公。頑なに単独行にこだわり「オレ流」を貫いてきた加藤にも結婚という転機が訪れ、精神的にも変化が現れる。しかしその矢先、文太郎は、初めてのグループ登山で仲間の道連れになって死んでいく。
 この本は、私のヨーロッパアルプス単独登山時の思い出の本だ。フランスのモンブランのグーテ小屋で知り合った、日本人ガイドの美人な姉さんに、「あなたは加藤文太郎ね」と言われて無性に嬉しくなったのを覚えている。
「疲れたよ、こんなに疲れたことはいままで一度もなかった。……だが、とうとうおれは家に帰ったのだ。ゆっくりと眠ることのできるわが家に帰ったのだ」(下巻370p) この言葉を残して死んだ文太郎の姿に、私は、スイス・ツェルマットのキャンプ場のテントの中で、ただただ涙を流した。
 今もう一度読み返してみると、「不器用だけど本質的に優しい人」というイメージでひたすら文太郎を描いていく新田の文体には、「主人公をちょっと理想化し過ぎじゃないか」と突っ込みたくなる気もある。しかし、読ませる小説を書くためには、善悪の軸をはっきりさせ、構図を単純にすることが不可欠なのかもしれない。物語をあまり複雑な構図にすると、読み手の頭がついていかなく、しらけムードになってしまうから。司馬遼太郎の代表作「竜馬がゆく」も、竜馬を思いっきり理想化していたし。
(私の本書の評価★★★★☆)

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