ロブ・ライナー監督,リバー・フェニックス「スタンド・バイ・ミー【日本語吹替版】」

スタンド・バイ・ミー【日本語吹替版】スタンド・バイ・ミー【日本語吹替版】
スティーブン・キング ロブ・ライナー ウィン・ウィートン

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 1998-07-24
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 郷愁。古い友だちの顔。あの頃への憧れ。何度見ても、胸が締め付けられる映画だ。
 感動する映画というのは、たぶん、涙のシーンが多かったり、悲しみのシーンが多かったりだけの、そういうものではないはずだ。そんな押し付けがましいもの――「こんな悲しいんだから、ね、お客さん、感動してね」――的な映画は、特にハリウッド映画には多いが、私は評価しないし、感動もしない。デミ・ムーア主演「ゴースト/ニューヨークの幻」がこの手の映画の典型だろう。
 感動する映画というのは、きっと、見ている観客のイマジネーションを惹起するような映画だと思う。それは映画の物語世界や映像世界が、視聴者の頭の中でどんどんと広がって、映画で描かれていない部分までをもイメージできてしまうような作品。同時に映像や物語をフックとして、観客個々人の体験や想いなどを呼び覚ましてくれるような映画だと思う。別言すれば、映像に許容力がある映画、映像空間に余裕のある映画ともいえる。これを備えた優れた映画のひとつが、このスタンド・バイ・ミーである。
 1959年、オレゴン州の小さな町のキャッスルロック(架空の町名、撮影場所は同じオレゴン州のブラウンズビル)。ともに12歳のわんぱく仲間4人(ゴーディ、クリス、テディ、バーン)が、森の奥で行方不明になった少年を見つけだそうと冒険に出る。ゴミ置き場で番犬の犬に追われ、鉄橋を歩いて渡り列車に轢かれそうになり、沼にはまりヒルにかまれ、夜は焚き火を見つめ、語り明かす。そんな冒険を経て、4人は死体となった行方不明少年を発見する。
 この映画には大げさなアクションシーンも少ないし、安易な恋愛ストーリーもない。かなり低予算で作られたものと思われる。しかしそこには、オレゴン州の田舎の町並みがあり、家があり、店があり、森があり、川がある。そんなありふれた田舎の風景が、ゆっくりとした時間の流れの中で映像化されており、ベン・E・キングが歌う「スタンド・バイ・ミー」のメロディが風景に溶け込んでいる。われわれはこの映像世界を見ながら、自分たちが子供だったころのふるさとの風景を思い浮かべる。子供時代のとっておきの思い出を思い出す。普段忘れがちな、そんな思い出群を、この映画はふいに呼び覚ましてくれる。そしてゆったりとした河の流れのような感情が、われわれの心に染みわたる。その感情を敢えて言葉にすれば、それはきっと「感動」なのだろう。

帰り道 いろんな想いが頭をよぎったが、みな黙っていた。・・・たった2日の旅だったが、町が小さく、違って見えた。やがてテディやバーンとは会わなくなった。学校で顔を会わすだけの付き合いになった。よくあることだ。友達はでき、また離れていく。
クリス「僕は一生この町にいるのかな。」
ゴーディ「何だってできるさ」
クリス「そうだ」(抱擁)
 あの12歳の時のような友だちはもうできない。もう二度と…。

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(私の評価★★★★★)
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