野島伸司脚本、いしだ壱成,反町隆史「未成年」 未成年 DVD-BOXいしだ壱成 香取慎吾 反町隆史 ハピネット・ピクチャーズ 2003-06-26売り上げランキング : 2,466おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 「未成年」のタイトルとおり、自分が何者かわからずあえぐ少年たちの生き様を描いた作品である。優秀な兄にコンプレックスを抱いている主人公・博人(いしだ壱成)、知的障害者の仁(香取慎吾)、優等生の勤(河相我聞)、博人の幼なじみの順平(北原雅樹)、そして暴力団末端構成員の五郎(反町隆史)。彼らと行動を共にする女子大生の萌香(桜井幸子)、博人と同級生の加代子(遠野凪子)、勤の恋人の瞳(浜崎あゆみ)、五郎の恋人のアリサ(朝岡実嶺)。歌手デビュー前の、初々しい浜崎あゆみの姿にはびっくりさせられる。桜井幸子の落ち着いた演技は、あいかわらず素敵だ。
 ストーリーに毒を盛り込んでいくのは、野島伸司らしい脚本の書き方だ。優秀な兄ばかり見て弟の博人を見ようとしない博人の父。かれは最後の最後まで息子の博人を裏切りつづけた。博人の兄も、恋人の萌香が心臓病だと知ったとたんに萌香を捨てる。息子の存在をすべてとしてしまった勤の母は、勤に恋人ができ子供ができたことに嫉妬し、恋人と子供を殺そうとする。政治家である瞳の父は、自分のことばかりで娘を踏み台にしても自分を守ろうとする。博人の同級生の加代子は、恋心を寄せる博人に振り向いてむらいたいあまり、友人を裏切り、利用しようとする。この冷たさと狂気の世界で、5人の少年と彼らの恋人たちは必死になって現実に立ち向かい、絆を守ろうとするが…。
 しかし残念ながらわたしは、本作品をあまり評価していない。いくつか良いシーンはあるのだが、やはり、クライマックスの田舎の廃校の立てこもり事件はいただけない。どうやってメシ食ってるの? そんな環境でよく子供が産めるなぁ、勤はなんで突然発狂するの?、少年ごときにあれだけ機動隊が取り囲むなんておかしい、と突っ込みどころが多すぎるのだ。設定が飛躍しすぎていて、リアリティを感じることができない。しかし問題は状況設定が飛躍していることではない。その描き方の問題だ。以前、野島は『高校教師』であれだけの破天荒な状況設定を、卓越したストーリー展開で、リアルな地平へ着陸させることに成功したのだ。しかし本作品には残念ながらリアルを感じることができなかった。それゆえ感情移入もできなかった。
 また役者の問題もある。メインの役者陣が若すぎてストーリーの空気が落ち着かないのだ。最大の原因は主役のいしだ壱成。かれは「ひとつ屋根の下」では脇役として良い演技をしたが、今回は主役なのだから演技にも進歩が欲しかった。若いからしょうがないかもしれないが、演技に落ち着きがなく、決めるべき場面でしっかりと決められていないのだ。これは高校教師の主役の真田広之と比べれば歴然と差がある。主役をはじめとするメインの人たちがいまいち締まらないから、物語のメリハリが効かずダラダラと流れてしまっているという印象を受けた。桜井幸子は決まっていたけど。

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(私の評価★★☆☆☆)
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