東野圭吾「さまよう刃」 (角川文庫)

 娘を持つ親にとっては身につまされるストーリー。

 大切にしている一人娘が、花火大会の日に少年グループに拉致され、蹂躙され酷い殺され方で死んでしまう。復讐に燃える父親:長峰は加害者少年の1人を殺し、さらに主犯格の少年を追う。少年法の被害者側視点のなさをあぶり出し、罪はどう償われるべきか、誰が裁くのか。あまりにも悲痛な父親の想いに、身悶えしながら一気に読んだ。

 強姦事件の発生件数が年間1万件以上と言われる日本では、決して他人事ではない。
 自分が主人公の立場だったら…。
 東野圭吾の小説はいつも、鋭い「刃(やいば)」で当事者意識を迫ってくる。そこが魅力だ。